公開日 2017年03月31日
大会レポート
応募者によるプレゼンテーション
最優秀賞
滝沢第二中学校科学技術部姫神山チーム
「盤面の支配者(Board of the Master)」
吉田慎之介さん
パズル型ゲーム「盤面の支配者(Board of the Master)」で最優秀賞を受賞した吉田さん、実は昨年もファイナリストに残り優秀賞を受賞しています。中学最終学年を迎え、「何か思い出作りに」と今年もチャレンジを決めましたが、当初はなかなか良いアイデアが浮かばなくて時間ばかりが過ぎる日々だったとか。そんな中、顧問の山口先生から「詰将棋やチェスのナイト巡回問題(ナイトの駒、将棋なら桂馬が盤上のマス目を1つずつ通り、元に戻ってこられる道を求める問題、ナイトの巡歴とも言う)をゲーム作りのコンセプトに使ってみたら?」とアドバイスをもらいました。さっそくWebで調べて自分でトライしてみると「駒の動きをしっかりさせることがポイントになる」ことに気づき、そこから本格的なプログラミングに入っていくことができたそうです。
ゲームは全部で5ステージからなり、クリアするごとにパズルの盤面が広くなり難易度もアップしていき、最後はラスボスとの戦いが待っているという構成になっています。制作期間は「正味2カ月もかかっていないかな」という短期決戦でしたが、「ちょっとしたミスをやらかすことも少なくなったし、去年のプログラミングづくりで学んだこと、身についたことをベースに一段上のステップに進むことができた」と、この1年間の自分の成長に確かな手応えを感じながらの制作過程だったようです。一度仕上げたゲームを仲間にプレイしてもらい、もらったアドバイスに基づいて駒の動きをゲーム内で確認できるヘルプ画面を搭載するなど、プログラミング仲間がいることも大いに活用できた様子です。
「はっきりと「これ」と言える取り柄もなかった自分に、少し自信を持つきっかけをくれた」とプログラミングへの思いを語る吉田さん。「高校生になっても、また来年もこの場に来たいです」と心強い決意を述べてくれました。
優秀賞
滝沢第二中学校科学技術部チームインセクター
「ペストバスターズ」
高橋将樹さん、高橋亮太さん
昨年は、吉田さんとチームを組んで優秀賞を受賞した高橋さん。今年のコンテスト出場へ向けた準備に取り掛かった頃は、昨年の受賞作の改良版を目指していたそうです。しかし、納得のいくアイデアがまとまらず悩む日々が続いたある日、地元特産のスイカを取り上げたニュースをテレビで見た時、ついにアイデアの神様が降臨。「スイカを栽培する→害虫もいる→それを退治する。そんなゲームはどうだろう?」とスイカ栽培と害虫退治をテーマにしたシューティングゲーム「ペストバスターズ」の構想がまとまったそうです。敵キャラ:「アブラムシ」(サイズ小・赤)、「ハエ」、「アブラムシ」(サイズ大・紫)、そして最終ステージに登場する「カメムシ」の4種の動きやスピード、倒す時間などに苦心しつつ(特にカメムシは大変だったとか)、種-発芽-開花-結実-枯れるというスイカの成長の各プロセスで害虫退治を考えられるように工夫したりと、制作期間の2カ月はあっという間に過ぎたそうです。
「それぞれアイデアが違ったから」と単独でのプログラミングに取り組んだ今年は「エラーを見つけられるようになったし、全体的な制作スピードも上がった」と手応えも十分だった様子です。せっかく作ったゲームだから、ほかの地元特産品も登場する別ステージを作って、楽しくゲームをしながら地元をPRできるような改良していきたいと、ブラッシュアップにも関心があるとのこと。「プログラミングは自分が作りたいものを形にするのに必要なもの。せっかくここまで教えてもらい、使えるようにもなってきたので、何か活かした方向へ進んでいきたい」と将来の展望も語ってくれました。
審査員特別賞
滝沢第二中学校科学技術部岩手山チーム
「Graffiti(グラフィティ)」
坂本陽生さん
昨年はアイデアを練っている段階でタイムリミットを迎えてしまったという坂本さんは今年がコンテスト初挑戦です。同じクラブの仲間である吉田慎之介さんの「今年はやるって言ったよね?」という“力強い後押し”もあって、「科学技術部部長としてかたちを残したい」とプログラミングに取り組んだそうです。
「得意なのはそろばん。大好きなのはゲームと読書、大嫌いなのは宿題」という坂本さんは宿題をしているとイライラするそうで、「このイライラをどう発散するかに取り組むのは、現代のストレス社会に必須のテーマだ!」と方向性を確定した上で、「では、どうしたらスカッとするのか」をあれこれ考えました。「誰かにいたずらをするとスカッとするけれど、現実の生活でそんなことをしたら迷惑になってしまう。でも、ゲームの中でいたずらをするならOK」とテーマを「いたずら」に決め、「では、どんないたずらにしようかな」とさらに考えることしばし。「他人(ひと)の家に落書きをするといういたずらなら、スリル満点だし、うまくいけばスカッとする。しかも、現実では絶対できない、ゲームならではのいたずらになる!」と作り込みに入っていきました。
こうして出来上がった「Graffiti(グラフィティ)」は「いたずらをゲームとして成立させるにはどうしたら良いか」、というあたりに苦心しながらも、楽しめる作品になっていると達成感も味わっているようでした。「制作中にうまくいかないと逆にイライラした」というエピソードも紹介しながら、「スプレーを吹き付けることにリアル感を出せたし、イラストと音楽を操作する技術もアップした」とプログラミングスキルの向上を自ら実感している様子。受験生であり、そろばん昇級への挑戦もあり、プログラミングもありと、何足も草履(わらじ)を履きながらの今回の挑戦を終えて「将来のことはまだわからない」と言いながらも、部活仲間の吉田さん、高橋(将)さん、さらにOGでU-18の部で最優秀賞を受賞した千田さんと和気あいあいと話す姿からは、プログラミングを楽しんでいる様子がしっかりと伝わってきました。
審査員特別賞
滝沢第二中学校科学技術部プロ魂女子部
「伝説の団子職人 極」
高橋歩未さん
昨年の最優秀賞受賞者である高橋さん。その受賞作をさらに練り上げた「伝説の団子職人 極」でコンテストに乗り込みましたが、残念ながら最終審査会当日を入院中に迎えることとなってしまい、部の顧問である山口先生の代理プレゼン、代理受賞となりました。 その山口先生の語ったところによると、中学3年生ということもあり、高橋さんも当初は受験に専念しようと考えていたそうですが、「このまま引退するのは名残惜しいし、もっと実績を積んで、将来の進路につなげていきたい」とコンテスト参加を決意したそうです。「前作、「伝説の団子職人」とつながるゲームを作りたい」と思うものの、アイデア出しに四苦八苦。そんな中、山口先生の「団子づくりを実際に見ていると、作り手によって手際とか団子の焼き上がり具合、仕上がり具合はずいぶん違うものだね」という一言にヒントをもらい、「お客さんが注文した団子を作るというスタイルでのゲームにしよう」とテーマを固め、制限時間内にどれだけ団子を作って売り上げを上げられるかを競うゲームが出来上がりました。
「昨年以上のゲームを同じ団子をテーマに作るのはハードルが高いよ」という先生の忠告も何のその。団子にこだわり、「焼いて味をつけてお客さんへ出す」「生焼け団子や、逆に焼きすぎて黒焦げになった団子という変わり玉を用意する」「団子の味のバリエーションを増やしてプレイヤーの楽しみをアップする」という工夫も入れて、オリジナリティにあふれた仕上がりとなりました。
最近は絵を描いてSNSにアップすることにもはまっているという高橋さんは「ゲームでもSNSを使ってみたい」と意欲満々だそうです。
審査員特別賞
滝沢第二中学校科学技術部さくらチーム
「FLY IN THE COSMOS」
櫻惟月さん
去年の夏に参加した岩手県立大学が主催するプログラミング体験教室をきっかけにRubyを使ったプログラミングをスタートしたという櫻さん。それまではプラモデル作りが唯一の楽しみだったそうですが、今はゲーム作りが一番の楽しみになっているそうです。そんな櫻さんは、今年の夏に参加した体験教室で学んだプログラミングを応用して作った宇宙を舞台にしたスクロールゲーム「FLY IN THE COSMOS」でコンテストに初挑戦しました。ゲーム作りでは、難易度の変更や戦闘機のバリエーションを付けることでプレイヤーが飽きずにゲームができるように工夫をしたそうです。そういうプロセスを経験する中で、ソースコードをきれいに書き、プログラムの修正を容易に行えるようにしたいといった課題にも自分で気付いた様子です。
最優秀賞
岩手県
「N-fall(エヌ・フォール)
千田小百合さん
2014年に滝沢二中の3年生で参加しU-15の部の最優秀賞を受賞して以来、昨年今年と3年連続でファイナリストになっている千田さんはすっかり“常連さん”です。プログラミングとはいささか縁遠いと思われる農業高校で栄養学の勉強を続けながら、「やっぱりプログラミングが好き」と今年も1人で参加を決めました。しかし、なかなかアイデアが思い浮かばず、滝沢二中時代の仲間など友人に「なんでもいいからアイデアをくれ!」と迫ったところ、元祖落ち物ゲームである「テトリス」を勧められたのだとか。「今までやったことのないゲームだったので面白そう」とアドバイスを採用。「でも、どうせなら“落ちない”テトリスにしよう!」とひねりを加えて制作に取り掛かりました(作品名の由来もわかりますね)。出来上がった作品はステージエディット機能を搭載し、標準ステージをクリアした後はプレイヤーが自分でステージ変更や追加もできるという優れもの。「昨年より遊んでもらえる人の幅も広がったと思う」と自信をにじませます。
プレゼンテーションもパステル調のバックにカラフルなミノを回転させていくという見せ方も工夫しながら堂々と発表していましたが、受賞後の壇上インタビューでは「3回目でも緊張します」と言いつつも、「楽しくプログラミングできました」とにっこり。緊張もほぐれた最終審査会後の懇親会での取材には「うまくいった!
去年より成長できたと実感した!」と満足げな感想も聞かせてくれました。
そんな千田さんにとってプログラミングは「生活の一部。切っても切り離せないもの」になっているそうで、「将来はIT分野のどこかには必ずかかわっていたい」と希望も語ってくれました。来年は高校3年生だけど? と水を向けると、「受験もあるけれど、時間を見つけて(というより、作って?)、トライして、また、ここに来たいです」と心強い発言もありました。
優秀賞
愛媛県 松山工業高等学校メカトロ部
「アクション de 頭の体操」
篠崎侑雅さん、兵頭直樹さん
ひたすらプログラミングに取り組む篠崎さん、その篠崎さんをもっぱら精神的、心理的にサポートする兵頭さんという役割分担で臨んだという2人。コンテスト初挑戦で見事優秀賞獲得となりました。
篠崎さんはプログラミングに本格的に取り組んだのは今年の5月からというプログラミング初心者。「ほしい本があったら購入するよ」という部活の顧問の先生の言葉に「Rubyの入門書をお願いします」と買ってもらうと、そこからはひたすら独学で取り組んで、プログラミングが完成したのは8月。でも、その3カ月の間にRubyの基礎を身につけただけでなく、優秀賞受賞のこの「アクション de 頭の体操」とともに、「エアホッケー」も作り上げていたのです!
「Rubyの基礎はわかったけれど、まだまだこれから」と謙虚に学び続ける姿勢の篠崎さんですが、その彼が作り上げた2本のゲームは審査員の各氏からは「なんだか懐かしいシンプルさで、逆にそのノスタルジックな画面がGood!」「奇しくもコンピュータゲームの原点に返ったような作品」と支持する声も多数上がっていました。「プログラミングのスキルアップをして、来年もまた来ます!」と高校1年生は元気に宣言してくれました。
審査員特別賞
島根県 松江商業高等学校コンピュータ部
「四郷乱舞」
黒崎里櫻さん、原瑞樹さん、濱田京都さん、大谷和輝さん、山本蓮温さん
プログラミング担当は部長の黒崎さん、キャラクターデザイン担当は副部長の原さん、そしてシナリオ担当の濱田さん、音楽・プロデュース担当の大谷さんという役割分担で臨んだ4人は、「まさかの予選通過で、〆切までは残り2週間」というスリル満点の作品作りだったようです。中でも、黒崎部長は「寝食を忘れて作り込んだ」という追い込みの地獄を味わったとか。
そうして完成した縦スクロール型シューティングゲームは、ストーリー、キャラクターデザイン、音楽、プログラミングともにすべてオリジナルです。作品名の「四郷乱舞」(「しごうらんぶ」と読みます)は中国に伝わる神話をモチーフにしたそうです。「なぜ?」と尋ねたら、「神話は自由度が高いから、キャラクターを自由に想像&創造しやすい」と4人が声をそろえて答えてくれました。
とにかく短期決戦での最終審査会進出だったので、「ボスキャラの動きが単調なので行動パターンを増やしたい」「ボスキャラそのものも豊富にしたい」とブラッシュアップをかけたい点はたくさんあるそうですが、「この短期間でここまで来たのは上出来」と満足も感じているようです。役割分担をする中で、お互いに進行状況を確認したりアイデアを出し合ったりといったコミュニケーションを取ることの大切さやスケジュール管理の重要性も痛感したとのことで、今回の挑戦で学んだことはたくさんあった様子です。 取材中、誰かが突っ込むとすかさず誰かが返すという元気いっぱいの4人。黒崎さんは「プログラミングももっとスキルアップする」、濱田さんは「シナリオも満足のいくものを練り込む」、大谷さんも「来年はもっと音に磨きをかける」とのこと。4人それぞれ好みがうるさいキャラクターデザインに関しては「ちゃんと落としどころを見つけて4人が納得のキャラを再び作る」と原さん。来年の挑戦を力強く宣言してくれました。
特別講演
講演タイトル:「Pepperと人工知能が創り出す新たな世界」
登壇者:ソフトバンク株式会社、ソフトバンクロボティクス株式会社 中山五輪男 首席エヴァンジェリスト
第一部:ロボット「知的(スマート)ロボットが世の中を変える」
「人型ロボットを一般家庭向けに販売したのは、Pepperが初めてです」
ソフトバンク株式会社、ソフトバンクロボティクス株式会社中山五輪男首席エヴァンジェリストによる特別講演が始まりました。
Pepperには家庭向けと企業向けがあり、企業向けPepperのソフトは、現在1,700を越える企業に導入されているそうです。航空会社や、銀行等での窓口業務の他、幅広い業種で「接客」「受付」「通訳などのインバウンド」「ヘルスケア」を中心に様々な場面に導入されているそうで、いくつかの具体的な活用事例を交えてお話し下さいました。
「ロボットのプログラミングは、真面目過ぎてはつまらない。センスが大事です。人間に言われると不愉快なことでも、ロボットに言われると気にならない、ということもあるので、今後Pepperの活躍する場所はどんどん増えると予想されます。そして、最近ではPepperアプリを作る年齢層が下がってきていて、Pepperの出前授業を行っています。京都立命館小学校では、小学校のプログラミング学習の授業で、Pepperアプリのプログラミングを行う事例も出てきています。最先端技術を使ったロボットを活用することで、アイディアを広げて自由に表現する創造力を身に付け、色々なものを見て聞いて、触れて、経験してアイディアを広げていって欲しいと思っています。」
第二部:人工知能「人工知能ブームの到来」
「今が、第3次人工知能ブームです」
世界のトップ企業が色々な人工知能を作っていて、ソフトバンクの系列企業であるcocoro SB株式会社では人工感性知能とよばれる人間の心を研究開発して人工知能を作っているそうです。
- 感情生成エンジンロボットやモノが感情を持つ
- 音声感情認識エンジン
- 雑談エンジン
- 物体認識エンジン
といった、知識の蓄積によってモノに心を誕生させる研究が既に始まっているそうで、いくつかの最新事例を交えてお話し下さいました。感情と記憶が蓄積されることで人工知能にも人間に寄り添う「心」が芽生え、将来的には家やビルが感情を持つようになるかもしれないということです。
最後に「人工知能で、面白い世界ができつつあるが、それを創り出すアイディアを出すのは人間で、若いみなさんです」と、会場にいるコンテスト出場者に向けてエールを送ってくれました。
講評・講演
講演タイトル:「プログラミングのちから」
登壇者:まつもとゆきひろ審査委員長
表彰式の後、まつもとゆきひろ審査委員長が審査結果について講評を述べられました。 今回の応募作品は本当に良い作品がたくさんありました。U-15の部で最終審査にノミネートされたのは、すべて滝沢第二中学校の生徒さんのプログラミング作品という異例の結果となりましたが、滝沢第二中学校の作品は、どれもレベルが高く、他を席巻してしまったのは、コンテストとして純粋に作品の評価で決めているからです。
独創性に富んだ騎士の属性を考えた作品「盤面の支配者(Board of the Master)」では、詰め将棋のように他プレイヤーの投稿ができるようになれば面白いと思いました。「伝説のだんご職人 極」も手堅い印象でした。実際に現実にはできないことをしています。「Graffiti(グラフィティ)」もゲームの世界だからできることです。
U-18の部「N-fall」も楽しんで作っています、「四郷乱舞」のキャラクター作りも、みな作ったプログラミング作品に愛情が伝わってくるものばかりでした。「エアホッケー」はシンプルなつくりに審査員が昔遊んだゲームを思い出し、「やってみたいという声も多くあがりました。」
続いて、審査委員長のまつもとゆきひろさんの講演「プログラミングのちから」。
わたしがRubyを作ってから随分経ちますが、Rubyが有名になり始めた頃、ある新聞社の方が松江市に住む私のところに取材に来ました。その人から出た質問が、「Rubyって何をするソフトですか?」でした。Rubyには「これ」という決まった使い方や目的があるわけではありません。私の答えは、「何でもできます」でした。ソフトを書けばゲームを作ることもツールを作ることも出来る。Ruby自身で言語を作ることも出来る。その可能性の広さがコンピューターでありプログラミング言語で、可能性は広く目的は限定されないのです。それがソフトウェアの力です。
既存のソフトウェアを使う人は、ワープロソフトならメニューが出て来て新しい文章を作ります。「文字を大きくします」といった選択肢がありますが、その選択肢はソフトによって与えられたものを選んでいるだけです。何でも出来るソフトでは無い。ところが、ソフトウェアを作る人には、そういう制約がありません。選択肢を自分で作ることができ、選択肢を増やことも出来ます。「誰かに決められたものの中から選ぶ」という限定された選択肢では、今迄のツールと同じになってしまいます。しかし、プログラミングが出来る人は自分で選択肢を増やしたり作ったりすることができる。これがプログラミングの力です。自分で選択肢作ったり増やしたりすることができるということは、すごいことだと言えます。
また、どんなソフトウェアでも、ひとつの世界をデザインするという意味で、プログラミングとは、創造する事、何も無いところから新しいものを産み出す事ですし、既存のルールに縛られない新しい世界をつくるという事はある種、自由の追求であると言えます。
ぜひ、コンピューターをただアプリとして使うのではなく、プログラミングしてコンピューターの持っている最大のポテンシャルを発揮できるところまで行き、究極の自由を手に入れ、自分の未来をつくっていって欲しいなと思います。
取材:田中のぞみ、山田律子(株式会社ヴィブラント)
特別インタビュー
滝沢第二中学校科学技術部顧問 山口晋先生
ここまでご覧になってお分かりの通り、今年のU-15の最終審査会は滝沢第二中学校科学技術部の皆さんの作品が独占する状態となりました。そこで、なぜ、滝沢二中はこんな偉業を達成できたのか、その極意を教えていただきたく、お話を伺ってみました。
滝沢第二中学校で技術家庭科を担当している山口先生は、授業では3年生全員に「情報に関する技術」として情報処理の手順とプログラム、フローチャート(アルゴリズム)、そしてRubyも含めたプログラミング言語について、座学での学習を週1時間、合計8時間行っているそうです。さらに部活動の顧問として科学技術部では、1,2年生向けにはプログラミングでプログラム体験をしてもらい、部内での発表会、1~3年向けにはロボットプログラミングと校内ロボコン体験、2,3年生向けにはRubyプログラミング体験といった“メニュー”を用意して、生徒たちはそれぞれの興味や関心に従って部活動を進めているそうです。「どれもこれといって特別なことをしているわけではないけれど」と言いながらも、学校に隣接する岩手県立大学と共同で夏休みになるとプログラミング体験教室を開催しており、「これは強みというか特長になっていると思う」と話してくださいました。実際、今回の受賞の生徒さんたちに聞いてみても、「テニス部がテニスコートに行くより、僕らが県立大の学生さんのところに話を聞きに行く方が近い」というほどの近距離にアドバイスをしてくれる専門家がいることは、「困ったとき、わからないとき、ここが知りたい! というときにすぐ聞きに行けるから、納得したり理解するのにすごくいい」とのこと、これはやはり滝沢二中のアドバンテージの一つとなっているようです。
でももう1つ、滝沢第二中学校にはアドバンテージがあることに気づきました。それは、山口先生の存在です。「毎年、このコンテストにチャレンジする生徒たちを見ていると、引っかかっているのは実は技術的に難しいことよりも、自分の中にあるアイデアをちゃんと他人にわかるように伝えることだということがよくわかる」とおっしゃる先生は、漠然としたアイデア、思い付きがきちんとした形になるまで、「生徒に何度も紙に書き出させる」ことを何よりも優先なさっているそうです。そこで「他人(ひと)に伝わるようになったら」初めてプログラミングに着手させるのだとか。その間、この「書き出してわかってもらう」過程に生徒一人ひとりと向き合って、時に厳しく時にやさしく、じっくり聞き役にあたっているのが山口先生なのです。ちなみに、今年は39人の生徒さんと向き合い、最終的に20人がプログラミングまでたどり着いたのだとか。これ、決して楽なことではありませんよね。十人十色ならぬ39人39色に一つひとつ丁寧に向き合い、耳を傾け、どうすれば形になっていくのかを一緒に考える。こんなやり取りができる先生がいて、コミュニケーションできることこそ、実は滝沢第二中学校の最大の強みなのではないか、そんな思いでインタビューを終えました。先生、ありがとうございました。