中高生国際Rubyプログラミングコンテスト2015 in Mitaka

公開日 2016年03月31日

開会式

 主催者を代表して、井上浩実行委員長より、「過去4回、色々な方が受賞してきました。お友達の中には絵が上手い子、歌が上手い子、色々な特技を持つ子がいますが、このコンテストに参加した子たちは、みな課題解決ができる子です。最終審査会での経験は、きっと将来に役に立つでしょう」と挨拶がありました。
 大会会長の清原慶子三鷹市長からは、「遠くから多くの参加者が三鷹市へいらしてくださったことに感謝します。そして、審査委員長を始め多くの関係者がこのコンテストをここまで育ててくれたことに感謝しています」と述べたうえで、「望ましい教育とは何かを考え、子どもたちの視線を生かす取り組みが必要だと感じています。まさに当コンテストはその場の1つで、『自分たちの視線を生かしたプログラミング』が発表されることに期待しています」と参加者に対する期待を述べ、「コンテストに参加したことは将来に繋がる経験で、必ず未来に結びつくでしょう」とエールを送りました。
 続いて、経済産業省商務情報政策局の渡邊昇治情報処理振興課長は、「自分が若かったころはパソコンに向かっていると遊んでいると思われたが、今は好きなことが世の中の役に立つのだから羨ましい」と話したうえで、「今回最優秀賞が取れず、チャンスを逃したと思っても、勉強すれば人は変われる。若い時はチャンスがまた来る」と参加者を励ましました。併せて、緊張をほぐすアドバイスも送りました。

大会レポート

全体写真

応募者によるプレゼンテーション

U-15の部

最優秀賞

滝沢二中科学技術部プロ魂女子部(岩手県)
「伝説のだんご職人」
高橋歩未さん

  • 高橋歩未さん
  • 「伝説のだんご職人」

 小さいころから科学ものが好きでPCに小4でハマったという高橋さんですが、プログラミングとの出会いは中学に入学してからでした。「将来の夢はゲームプログラマー」という彼女、クラブの先輩が昨年のコンテストで最優秀賞を受賞した姿を見て、「私もチャレンジして、将来の実績にしよう!」と今年、チャレンジしました。
 作品は「ブロック崩し」というおおよその方向性はあったものの、それだけでは物足りず、何を足したら良いのか悩んでいると、先生から「ビンゴゲームも使ってみたら?」のアドバイス。「よし、2つを掛け合わせてみよう」と取り組むものの、ブロック崩しとビンゴゲームを無理なく結びつける「カギ」が見つからず、またまた悩む日々。そんなある日、スーパーマーケットでふと3色団子を目にしたとき、「これだ!」とついにアイデアの神様が降臨、3×3のビンゴのマス目とそれを崩していくブロックを「アンコ」、「みたらし」、「ずんだ」の3色にして、最もうまくゲームをクリアできたら「伝説のだんご職人と呼ぼう」とアイデアとストーリーが一挙に生まれ固まりました。「ずんだ」で郷土色も織り込むことにしたそうです。製作中はお母さんにチャレンジしてもらって、「目が疲れる! でも、おもしろい」と感想を言ってもらったりしながら、いろいろ工夫を重ね、作品を作り上げたそうです。
 「結構しんどかった」と振り返る製作過程ですが、それだけに今回の受賞は「最高にうれしい」と満足気。だから、来年、後輩たちにもこの達成感、満足感を味わうべく、トライしてほしいと思っているそうです。「私にとってプログラミングは気力との闘い」という高橋さん、将来はきっとスーパーゲームプログラマーになっている!

優秀賞

滝沢二中科学技術部スレンダー27(岩手県)
「バウンド・キングダム」
吉田慎之介さん、高橋将樹さん

  • 吉田慎之介さん、高橋将樹さん画像
  • 「バウンド・キングダム」画像

 『ポケットモンスター』好きの吉田さんと『モンスターハンター』好きの高橋さんは、小学校時代からの友人。2人ともゲーム好きで、「RPGとアクションゲームを掛け合わせてみたらどうだろう?」という発想から今回の作品作りに取り組みました。RPGの流れとアクションゲームの流れを紙に書き出し、何度も検討を重ねて全体の構成を固めたうえで作品を作り込んでいったそうです。だからこそ、「自分たちのアイデアを形にできたし、キャラクターやゲームの戦略を作りたいように作ることができた」と満足する一方、中学では習っていない知識がないとどうしてもクリアできない壁もあったそうで、そういう時は先生に教わったり、自分たちで調べたりして、一段ずつ階段を上るように課題をクリアしていったそうです。
 今回、最優秀賞を受賞した高橋歩未さんとは同学年の同じクラブ仲間。「どっちかが(最優秀賞を)とれると思っていたけれど、やっぱり悔しい」と2人は言う。プログラミングは「自分の次に必要なもの」(吉田さん)「自分が作りたいものを作るのに必須なもの」(高橋さん)というコンビ。来年はきっと今年の悔しさをバネに、新しいチャレンジをしてくれるのでは?と期待しています!

審査員特別賞

東京都
「ワクワクworknote」
二ノ方理仁さん

  • 二ノ方理仁さん画像
  • 「ワクワクworknote」画像

 小学3年生でコンテスト初参加の二ノ方さんは、最終審査会最年少参加です。プログラミングとの出会いは小学2年生の9月、「偶然、Scratchのイベントに行ったら、ハマった」のだそうです。その後、図書館に通ったりして自分で勉強する中、今年の春にRubyに出会い、自分でもこれを使ってプログラミングをしてみようと取り組み始めました。なぜプログラミングが好きなのかを尋ねたところ「コンピュータが自分の言うことを聞いている気がして得意になれるから!」と、目を輝かせて教えてくれました。
 そんな二ノ方さんは、読書は大好きだけれども、学校の「読書ノート」の狭いスペースに読書感想を小さい文字で手書きするのは「あまり得意じゃない」そうで、「それなら、キーボードで入力できて、検索で過去の感想文も探せるようにしたらどうだろう?」と思いついて作ったのが今回の受賞作品となりました。作品づくりを通じて「データベースのことは初めて学んだけれど、これからもっといろいろなことに生かせていけそうだと思った」と手応えを感じていました。
 審査員を始め観客の大人たちを前に堂々と、時にユーモアを交えてのプレゼンは、初めてとは思えないスムーズさでしたが、「緊張した。準備はママと二人三脚で、昨日(コンテスト前日)の夜もすごく頑張った」と、そこは小学3年生らしい素直な感想を漏らしていました。しかし、「プレゼンも練習すればちゃんとできるとわかったから、良い経験になった!」と最後はクールな一言で決めてくれました。

審査員特別賞

さぬき市立さぬき南中学校ソレイユ(香川県)
「ひとみとななみの星座占い」
田中仁美さん 井内七海さん

  • 田中仁美さん 井内七海さん画像
  • 「ひとみとななみの星座占い」画像

 昨年は「夏の暑い日に、教室の冷房を入れられるかどうか」という “死活問題”に応える、「アメダスからリアルタイムの気温情報を得るプログラム」を作った2人。今年は一転、女子中学生が好きな“占い”という乙女なプログラミンでチャレンジです。なぜ、このコンセプトで? と尋ねたら、「実はゲームが作りたかったのだけれど、間に合わなかったんです」と、ちょっとした裏事情も教えてくれました。
 そんな2年目のコンビは息もぴったりで、田中さんはプログラムの顔となるイラストを、井内さんはおみくじ占いのプログラムを担当と、役割分担もスムーズだったようです。アイデア探しは去年の大会後からずっとしていたそうですが、実質製作期間は3カ月。その間、最も苦労したのは「画面から画面への移動が、なかなかスムーズに進まなかったこと」(田中さん)「エラーがいろいろ出るたびに、それを一つひとつ解決したこと」(井内さん)だそうですが、そんな苦労もありましたが「自分で遊んだ時」(田中さん)「エラーが解決した時」(井内さん)には「やったぁ!」とすっきり感を存分に味わったようです。
 そんな2人にとってプログラミングとは「努力を重ねると必ずできること」「地道な作業」と実に息もぴったりな感想。来年は、今年の経験を活かしつつ、さらにホームページ作成などにも幅広く取り組んでいきたいと考えているそうです。そんな2人に「2年目のプレゼンは余裕だった?」と聞いたら、「いいえ! 緊張しました!」と声をそろえて即答してくれました。

審査員特別賞

さぬき市立さぬき南中学校TBO(香川県)
「君は学校にたどり着けるか」
大社裕典さん 山地凛星さん

  • 大社裕典さん 山地凛星さん画像
  • 「君は学校にたどり着けるか」画像

 チーム名の「TBO」って何?と聞いたら、「Terrific Brilliant Organization、すごく素敵な団体の略です!」と答えてくれた大社さんと山地さんは中学1年生。小学生のころ、PCでワープロやお絵かきソフトは使っていたものの、プログラミングと出会ったのは中学入学後、PC部に入部してからとのこと。部活でプログラミングのほかにもCGや動画、音楽やホームページ作りなどPCでできることを一通り経験する中で、「プログラミングが面白い」と思ったそうです。このコンテストへの参加を先生から勧められた時、「1人じゃ心細いけど、ゲームを作りたい同士でなら一緒にできる」と2人でチームを組んだそうです。
 どうせプログラミングを書くなら、1つの作品の形になったものにして、自分で遊んでみたい! と練り始めた構想は当初、壮大なアドベンチャーゲームだったそうです。でも、顧問の先生から、「自分たちの今のレベルでできるものにしなさい」と言われ作ったのが今回の受賞作でした。苦労したのはゲームの肝である「出会う事件」をどのくらい難しく設定するか、そのさじ加減。それと、「ほとんど毎回出てくる」エラーを直すのにはほとほと苦労した様子でしたが、音入れに工夫をして、いろいろな教科を見渡しながら問題作りを考えるのはとても楽しかったとのこと。作ったゲームが実際に動いた時には、何とも言えない達成感も味わえたそうです。「自分のアイデアと工夫でどんなゲームでも作れるんだ」と改めてプログラミングの魅力を知ったという2人。「来年も頑張ります」と心強い一言がありました。

U-18の部

最優秀賞

長野県
「Thirty Play List」
坂田和也さん

  • 坂田和也さん画像
  • 「Thirty Play List」画像

 プログラミングとの出会いは高等専門学校に入学してからという坂田さん。このコンテストのことを先輩から聞き、プログラミング歴2年で培った力をぶつけた作品で臨みました。「音楽の合計再生時間が15分になるプレイリストを作ろう」という元々の発想は冬休みに生まれたそうですが、そこから温め続けて今回の作品へと膨らませてきました。苦労したのは「たくさんの楽曲の中から15分になるプレイリストを算出すること」で、そのための関数の作り方がわからなかったことは一番たいへんな思い出だそうですが、その分、それができた時のうれしさ、楽しさはひとしおだったと話してくれました。
 「僕の切り札の作品を出して、評価してもらえたことが何よりもうれしい」と最優秀賞の喜びをかみしめていましたが、「プログラミングを書いて、実行して、結果が出てくることが楽しい」という職人気質の人らしく、「作品自体はまだまだ発展途上です。後日、一般に公開もして多くの人に使ってもらい、さらに発展させていきたい」と意気込みも語ってくれました。

優秀賞

東京都
「conveyer」
石部大夢さん

  • 石部大夢さん画像
  • 「conveyer」画像

 高校2年生の石部さんは、初コンテスト、初プレゼンで初最優秀賞受賞と初物尽くしだった昨年に引き続いての応募です。「引き続いて参加できてうれしいし、最終審査会の会場に仲間がいて楽しい」と、2年連続参加となった楽しさを話してくれた一方、「プログラミングについて、自分なりの経験則ができた」と、この1年の間に積み重ねてきたステップと自信を感じさせる感想も述べてくれました。
 「機械学習について取り組んでみたい」と選んだ今年のテーマは「検索エンジンとリコメンドサービスの2つの機能を併せ持つプログラムの開発」。それを作り上げるための目標とこのコンテストを位置づけ、作品作りを楽しんだそうです。とはいえ、機械学習についての「とっかかり」を探すのにはかなりの苦労もあったとのことで、それだけに作品作りを通じて機械学習というものを実感できたことは今回、最も楽しかったし、さらに「技術的にとりあえず動けばOKというのではなく、より洗練された動きになるにはどうすればいいかということを考えるきっかけにもなった」と、いかにもコツコツと作り込むのが得意な石部さんらしいコメントも出ました。
 「もしかしたら、今年も?」とちょっと思っていたという石部さん、最優秀賞は逃したものの、その差は「紙一重」という審査員講評をもらい、「来年は受験生だから、まずはそちらに力を入れるけれど」としながらも、「大学へ行ってさらに学び、将来はやりたいことができる会社には入れたら…」とプログラミングと、それを通じて広がる世界に手ごたえを感じているようでした。

審査員特別賞

島根県立松江商業高等学校情報処理科(島根県)
「ブロック崩し問題~遊び? いいえ、勉強してます。」
石川瑞希さん

  • 石川瑞希さん
  • 「ブロック崩し問題~遊び? いいえ、勉強してます。」

 Rubyに取り組むようになったのは3年生になった今年からという石川さん。コンテストへの応募は先生の勧めがあって決めたそうですが、何やかやと諸事に追われて作品作りに着手したのは締め切り間際になってしまったそうです。そのため「とにかく短期決戦だったので、それが一番しんどかった」そうで、実際、学校で夜まで残って作業をし、さらに帰宅してからも作業と、夜なべの日々だったそうです。しかし、学業の一環としてのプログラミングという位置づけから、初めてプログラミングを自分で完成させるという経験を通じてプログラミングがすっかり楽しくなり、「苦労の向こう側の楽しさも知った」と、なかなか哲学的な境地にも達したようです。さらに、「これまではJavaを学んできてRubyを扱ってみると、その扱いやすさに魅力を感じた」とビシッと決める一言も。
 元来、人前で話すのは苦手という石川さん、今回のプレゼンも大変だったと言っていましたが、実際には「島根にもPCはあります」と茶目っ気たっぷりな発表ぶりを見せてくれました。その辺を聞くと、「やってみるって大事ですね。1人で大勢の前に立って話せた経験は、これからいろいろな場面で生かせると思います」と自信も感じた様子です。
 春からは地元島根のIT企業へ入社して社会人としてプログラミングに携わっていくことになるそうですが、今回の応募から受賞という経験を通じて「自分の足場ができた」と感じているとのこと、きっと社会に出てからも活躍してくれることでしょう。

審査員特別賞

岩手県
「Dietary Game」
千田小百合さん

  • 千田小百合さん画像
  • 「Dietary Game」画像

 昨年はU-15の部に部活の仲間の男子2人と一緒に参加して見事、最優秀賞を受賞するという実力者。今年は、地元の農業高校に進学して食品科学や栄養学を学ぶ高校生となって、1人での参加となりました。プログラミングとは直接接点のない学校生活の中で、引き続きRubyプログラミングコンテストに応募した理由を尋ねると、「卒業した中学(滝沢二中)を訪ねた時に、プログラミングに取り組んでいる後輩たちの姿を見たら、私も今年も頑張ろうと思ったんです」とまっすぐな眼差しで答えてくれました。
 けれども、やはり1人参加は大変なこともたくさんあり、中でも「アイデアの神様が1人だとなかなか降りて来てくれない」と、仲間とあれこれディスカッションして、アイデアのキャッチボールをすることの大切さ、楽しさを改めて感じたそうです。それだけに、1人で作品を作り上げたという達成感もひとしおだったことがインタビューの端々から窺えました。プレゼンでは、デモが上手くいかなくなるというミスも起こりましたが、今年の挑戦を通じてのそれやこれやを糧に「来年はリベンジしたい」と頼もしい決意表明をしてくれました。楽しみですね。

審査員特別賞

長野県
「Paradox Alice」
松工ぐらし

  • 松工ぐらし
  • 「Paradox Alice」

 ストーリーモードとインタラクティブモードが交互に出てくる、ちょっと凝った作りの作品は、最終審査会でも冒頭に可愛いアリスに扮したキャラが登場するなど、かなり凝ったプレゼンテーションでした。このコンテストに向けてチームを組んでいた、小林さん、小沢さん、高砂さんの3年生グループに、シナリオを担当するため2年の布野さんが「引っ張り込まれる」形でスタートしたそうです。作品作りは、布野さんの2つの「きづく」、「大切な人たちとのつながりに気付いていく」と「仲間となるキャラクターと関係を築いていく」をコンセプトにしたシナリオに基づき、メンバーがそれぞれプログラミングにデザインと役割分担をしながら完成までこぎつけたそうです。
 来年からは大学生となる平林さんは今回の作品を大学まで持っていき、3DCG化など更なるブラッシュアップを図りたいと考えているとのことです。シナリオ作りに時間を割いたという布野さんは、「実はRuby初心者なんです。今回のコンテスト参加をきっかけに、来年はもっとRubyを学びたい」と意欲を見せてくれました。社会人になるという小沢さんと高砂さんは「今回の応募はいい経験になったし、最終選考の場に来られたこともうれしかった」と満足気に感想を述べながら、「社会に出てからも、何らかの形でこの経験やプログラミングを生かしていきたい」と抱負を語ってくれました。

特別講演

講演タイトル:「プログラミングが支えるこれからのインターネット」
登壇者:NTT未来ねっと研究所高橋宏和主任研究員

高橋宏和主任研究員

   高橋主任研究員は、プログラミングが大好きな小学生で、ファミリーベーシックを使って、簡単なゲームを作っていたそうです。中学生になって初めてパソコンを買ってもらったのがPC-9801(N88-BASIC)で、RPGゲームの作成環境を作ったそうです。高専生の時にはパソコン通信にはまり、Unix系のオープンソースのオペレーティングシステムであるFreeBSDに触れ、画像処理ソフトやテキストお絵描きツールを作り、会社員になるとコードをどれだけ短く書くことできるかを競う「コードゴルフ」に夢中になったそうです。年代ごとにどんなことに関心を持ちどんなことをしてきたかを話され、みな興味深く聞いていました。
 特別講演の内容は、「インターネットはどうやって動いているのか?」についてです。インターネットは同時に複数の相手と通信可能な、とても便利なシステムです。現在、150億台の装置が繋がり、インターネット全体の通信量は平均で1秒間に224テラビット、つまり28兆文字分の情報が処理されていることを、郵便の仕組みを例に、わかりやすく説明してくださいました。郵便局の数と同様に、装置を増やせば増やすほどデータの処理ができる、その役割を担っている装置がイーサーネットスイッチとIPルータで、イーサーネットスイッチは差出人情報を学習していくことのできる装置です。スイッチとスイッチを繋ぐことも可能ですが、膨大な量のデータではイーサーネットスイッチがパンクしてしまう。そこで、IPルータ同士で宛先情報を教え合い、情報を整理して経路(ルート)を作っているそうです。このすごい装置の仕組みを理解したところで、高橋さんからプログラマーであるコンテスト出場者へ、プログラミングの重要性についてのお話がありました。
「インターネットのサービスを提供するために、このような装置のコストが問題になっています。また、新しいサービスを迅速に提供することも求められています。この装置の役割をプログラミングで実現できれば、専用の装置は必要なくなり、パソコンで全部動かすことができ、これらの課題を解決できます。次世代を担う若い人たちがプログラミングで解決してくれることを期待しています」

講評・講演

講演タイトル:「コードの未来」
登壇者:まつもとゆきひろ審査委員長

まつもとゆきひろ審査委員長

「過去に比べても完成度が高いコンテストとなったと思う。審査員全員が楽しめるコンテストとなった」と全般の評価を述べたうえで、ゲームあり、ツールありで単純に比較できず、今年は「技術」、「アイデア」、「プレゼン」それぞれで採点したこと、毎回審査が難しくなっていることを語られました。
U-15の部で最優秀賞の「伝説の団子職人」は、そのままアプリに使えると高い評価。優秀賞の「バウンド・キングダム」は、プログラミングに対する努力を買っての受賞となったそうです。
U-18の部で最優秀賞の坂田さんの「Thirty Play List」は、勉強を捗らせるためのプロブラミングというアイデアが評価されました。コンピュータサイエンスの世界で、先人達がいろいろ悩まれてきた問題に果敢に挑戦したことも評価。優秀賞の石部さんの「conveyer」はアイデアのほか技術面を高く評価し、「就職の面接だったら企業が集まったのでは」と付け加えた。また千田さんの「Dietary Game」はプレゼンで絵が出なかったのが残念だったが、「実用性が高い」と評価。

続いての、講演は「コードの未来」。ある予測に、シンギュラリティ(コンピュータの知能が人間を上回る事態)が25年後の2040年に起こるのではないかと言われてきたそうです。しかし、コンピュータの進化は目覚ましく10年から20年後には仕事の49%がなくなるかも知れません。現在、人間が行っている仕事をロボットや人工知能が取って代わる可能性が現実味をおびてきました。コミュニケーションを伴う仕事は、40年後にはもっと減っているかも知れませんが、プログラミングの仕事はなくならないとのこと。
「パソコン利用=アプリ利用は、他人の決めた選択肢だけれど、プログラミングは自分自身の選択。僕はRubyを作って言語を自由にデザインしたかった。ソフトウェアの開発もデザインで、デザインとは「選択」であり「決断」「自由」であることです。ソフトウェアを作ること=問題を解決すること。解決方法をデザインすることで、未来の運命を左右する可能性がプログラミングにはあります」と教えてくれました。

<まつもとひろゆき審査委員長の一言コメント>
「応募作品がゲームからツールまで多岐にわたり、それを同列に並べて評価することは非常に難しいけれども、『こんな工夫をするのか』と若い発想に驚かされるなど、選考に苦しみながらもとても楽しいコンテストだった」と全体講評を述べたまつもと審査委員長に、表彰式後の交流会会場でコメントもいただきました。
「今年で5回目を数えるRubyプログラミングコンテストは、年々、レベルアップしているなと感じています。また、同じ学校から継続して応募があるなど、地域や学校の中でこのコンテストに挑戦するという伝統ができつつあることも歓迎しています。それと同時に、新しい人たちにも今まで以上にどんどん参加してほしいとも思っています。そういった意味では、今年、小学校3年生の参加があったことは、Rubyプログラミングコンテストのすそ野が確実に広がっていることを示していると感じ、うれしく思っています」

取材:田中のぞみ、山田律子(株式会社ヴィブラント)