公開日 2018年02月07日
大会レポート
開会式
主催者を代表して井上浩実行委員長より、これまでのU-15部門とU-18部門という年齢での区分から、ゲーム部門とクリエイティブ部門に変更された旨の説明がありました。全83作品の応募の中から、ゲームのプログラミング作品の応募が多くなっていたこともありゲーム部門6作品、そしてクリエイティブ部門では個性的な作品の3作品が、最終審査に残り、「ここに残ったこと自体素晴らしいことで、残った9作品は、どれもたいへん素晴らしい作品ばかりでした」と讃えました。
また経済産業省の、情報技術利用促進課の中野剛志課長は、「プログラミングのコンテストは全国でも増えたが、Rubyのプログラミングは国家戦略としても優れている。ここに選ばれるということは、たいへん輝かしいことで、1年を通じて25歳以下のプログラマーを育てるIT『未踏』事業にも参加していただき、さらに飛躍してほしい」とエールを送りました。
続いて、総務省 情報流通行政局 情報流通振興課の田村卓也情報活用支援室長は、「83件の応募者が、将来のICT(Information and Communication Technology)、IoT(Internet of Things)を支えてくれるものと期待しています」と参加者を励ましました。
▲審査委員席の様子
応募者によるプレゼンテーション
最優秀賞
愛媛県立松山工業高等学校(愛媛県) 福永 蓮さん
作品名「ぴったり迷路」
ゲーム部門で見事最優秀賞を勝ち取ったのは、初参加の高校1年生、福永蓮さん。作品「ぴったり迷路」は、プレイヤーをブロックにあてて微調整し、1マスの隙間をくぐり抜けながらゴールを目指す、新感覚の迷路ゲームです。このゲームの特徴は、なんと言っても「迷路なのに、ひとつも行き止まりがない」こと!それだけに、一見迷路に見えませんが、遊んでいるうちに、これが迷路であることがわかってくるのがすごいところ。このオリジナリティあふれるアイデアには、プレゼンテーション後の質疑応答でも、「感動した!」「もはや迷路の次元を超えている」といった声が審査員から続々とあがりました。
どうやってこの斬新なアイデアに辿り着いたのかを尋ねてみると、「最初は普通の迷路を作ってみましたが、まったく面白くなかったんです」と福永さん。そこで、アクション要素を追加して様々な迷路を作ってみようと試行錯誤する中で、たまたま“通れると思っていたブロックとブロックの間の隙間が通れない”という問題にぶち当たったと言います。最初はこの隙間を直そうと思っていたそうですが、逆にこの「絶対に通れない隙間」を利用しようと思い立ち、今回のゲームに辿り着いたのだとか。まさに逆転の発想の勝利ですね。
そんな福永さんですが、プログラミング歴はまだ浅く、高校に入学して初めて部活動でプログラミングを学んだとのこと。今作は締切に追われつつも、およそ2ヶ月で完成させました。将来は「生活に使える便利なアプリを作ってみたい」と話す福永さんに、来年について話を振ってみると、「来年は、ゲームとクリエイティブの両方に出したい」と意欲を語ってくれました。どんなアイデアで私たちを驚かせてくれるのか、楽しみですね。
優秀賞
岐阜県立岐阜商業高等学校EDP部(岐阜県) 今井康智さん、黒田虎太郎さん
作品名「わーにんぐ!」
プログラミング担当の今井さんと、デザイン担当の黒田さんの二人が作ったのは、「わーにんぐ!」という、かわいらしいワニが主人公のアクションゲームです。このゲームは、今井さんがとにかくワニが好きで(プレゼンでは、大好きなワニのぬいぐるみを持参して見せてくれました!)、ワニの可愛らしさをクラスのみんなに伝えたい!という気持ちから生まれたのだとか。
今井さんは現在高校3年生。プログラミング自体は、1年生の頃から部活でやっていたものの、Rubyを始めたのは3年生になってから。「Rubyで誰も作ったことがないようなゲームを作りたい」と、作成を決意しました。しかし、周りにはRubyに詳しい人がいなかったため、インターネットで調べながら取り組むことに。苦労しつつも、Rubyを始めて4ヶ月で完成にこぎつけ、見事優秀賞を獲得されました。
今井さんのワニ愛をビジュアルで表現してくれたのは、デザイン担当の黒田さん。このゲームに登場する約100種類のイラストはすべて黒田さんによるもの。「時間がかかり大変だった」としつつも、今井さんも黒田さんも「協力してひとつの作品を作り上げることができたことは、とても大きな成果だった」と手応えを感じていました。
「ワニの可愛らしさを伝えたい!」という気持ちから、このゲームの着想に入っていったという今井さんは、授賞式後の壇上インタビューでも、「ワニの可愛らしさを審査員の皆様に評価して頂き、このような賞を頂けたのだと思います。その点が非常にうれしいです!」と声を大にし、会場を沸かせていました。
審査員特別賞
愛媛県立松山工業高等学校(愛媛県) 篠﨑 侑雅さん
作品名「じゃんけん大迷宮」
昨年高校1年生の時に、同じ部活の仲間とチームを組んで初参加し、U-18の部で優秀賞を受賞した篠崎さん。ひとりでの参加となった今年は、じゃんけんの「グー、チョキ、パー」を使って迷路をクリアしていくゲームでのチャレンジです。Rubyを始めて1年半。普段は部活でゲームやWebアプリケーションの作成を行っているという篠崎さんは、家にいる時、学校からの帰り道など、常に「何かを作ろう!」と頭の中で思考を巡らせているそう。そして、そこで出たアイデアを、実際に部活の時に実装してみて、その中でもよかったものを完成まで持っていく、というスタイルで日頃からプログラミングに励んでいるのだとか。今回のゲームもそんな中から生まれました。
授賞式では「じゃんけんというわかりやすい題材を使って、奥の深いパズルゲームを作られた。すごく発展性のあるゲーム」という好評価を受けつつも、「今年こそは最優秀賞を、という気持ちで挑んでいたので……」と、審査委員特別賞という結果に悔しがる姿も。しかし、「来年こそはここにいる人たちを驚かせるようなものを作りたい」と次回への意欲も見せてくれました。将来の夢を聞くと、「ゲームプログラマー」とすぐに出てきた篠崎さん。きっとこの悔しさをバネに、会場をあっと驚かせるような作品を見せてくれることでしょう。来年も楽しみですね。
審査員特別賞
愛媛県立松山工業高等学校(愛媛県) 千原 安司さん
作品名「ドットコロシアム」
高校1年生の千原さんは、今回初参加で堂々のファイナリストとなりました。プログラミングをはじめたのは、中学3年生の夏に、高校の体験入学に来た際、メカトロ部の展示を見て、「自分もやってみたい!」と思ったことがきっかけなんだそう。入学後は、迷わずメカトロ部への入部を決め、プログラミングに励んできたと言います。
今回の「ドットコロシアム」は、上下左右4つの動作だけで戦う対戦ゲーム。ゲームのうまさと関係なく、初心者でも気軽に楽しめるのが特徴です。このゲームが生まれるまでのいきさつを尋ねてみると、部活で、「ブロック崩し」の練習をしていた際に、“マスで何かできないかな”と思ったのが、始まりなんだそう。そこでまずは「陣取りゲーム」のアイデアが浮かびましたが、それだけでは面白くなく、アイテムを追加してバトルゲームにしよう!と思い立ち、今回の「ドットコロシアム」が完成したのだとか。
プログラミングをはじめてまだ日が浅い千原さんですが、今回の結果については、「嬉しさもあるけれど、やっぱり悔しい。他のファイナリストの作品も見て勉強になったので、また来年に向けて頑張りたいです」とコメント。最後にプログラミングの楽しさについて伺ってみると、「やはり自分が思ったように書けること。縛りがないことが好き。これからも続けて、来年はもっと上の賞を目指したい」と意欲を見せてくれました。
審査員特別賞
滝沢市立滝沢第二中学校科学技術部 science(岩手県) 関根優基さん、平澤尚太さん
作品名「Ion Union」
コンテストの常連校・滝沢第二中学校からファイナリスト入りを決めたのは、初出場の中学3年生、関根さんと平澤さんのお二人。企画・デザイン担当の関根さんと、プログラミング担当の平澤さんは、小学生の頃からの友人。今回も、普段の何気ない会話から自然にコンビを組むことになったそう。そんな仲の良い二人が作ったのは、ゲームをしながら化学式を覚えることができる「知育化学ゲーム」。アイデアがでるまではかなり苦労したそうで、「なかなかアイデアが出ず、先生のところに相談に行ったんです」と関根さん。そこで「ILC(国際リニアコライダー)というものが岩手にできるよ」という話を聞き、調べるうちに、化学の授業の内容と似ているものを感じたのが、今回のアイデアに辿り着いたきっかけだったようです。制作過程では難しいことも多く、何度かくじけそうになったそうですが、その度に、「絶対に東京に行くんだ!」と自分たちを励まし頑張ってきたそうです。
プログラミングをはじめたきっかけを尋ねてみると、関根さんはなんと、小学6年生の時に、当時滝沢第二中学校の3年生だった千田小百合さんが(団体で)最優秀賞を受賞されたことを聞き、「自分も中学に入ったら、科学技術部に入りたい!」と思ったことがきっかけなんだそう。中学は今年で卒業ですが、来年について話を振ってみると「自分が今志望している高校には、プログラミングの部活がないんです。でも、ないからと言って諦めるのではなく、自分で部活を作って、これからも続けていきたいです」と、頼もしい言葉を頂きました。来年も楽しみにしています!
審査員特別賞
愛媛県立松山工業高等学校(愛媛県) 高橋 良汰さん
「TANKS of WAR」
戦車を使った対戦型ゲームを作り、ファイナリストとなった高橋さん。ゲームの中でも特に対戦ゲームが好きだったことから、自分でも作ってみようと、アイデアを巡らせたと言います。工夫した点は、たくさんのスキルを考えたところ。「自分の腕前だけで勝敗がついてしまうのではつまらない。自分がゲーム内で不利な状況でも逆転できるようにすれば、きっと対戦が楽しくなるはず」。しかし、このたくさんのスキルはゲーム性を高めた反面、高橋さんの頭を悩ませたようで、「良いスキルと悪いスキルに差が出来すぎるとゲームバランスが崩れ、楽しくなくなってしまう」と、内容を考える際は苦労したと言います。
現在高校1年生の高橋さんは、プログラミングをしたくて、工業高校を志望。入学後はメカトロ部に入部し、制作に励んできました。プログラミングの楽しさを尋ねてみると、「自分が好きなことをそのまま形にできること」との返事が。自分が好きなことが自分の手でできてしまうところに魅力を感じているそうです。
最後に、「ここまで残れると思っていなかったので、最終選考に残れたことがうれしい」と、初参加の感想を語ってくれた高橋さん。来年もまた挑戦しますか?という問いには、「はい」と力強く頷いてくれました。
最優秀賞
岩手県 千田小百合さん
作品名「Ultimus」
2014年の初出場以来、4年連続ファイナリストの実力者である千田小百合さん。最優秀賞2連覇なるかと、期待と注目が集まる中でのプレゼンテーションとなりました。過去3年間はゲームでの出場でしたが、「復習に使えるノートのようなものが欲しい」と感じたことから、今年は心機一転、「手書きの数式を認識し、入力した数式の計算結果を調べることができる」Webアプリケーションを作成。初めてチャレンジしたRuby on RailsのWebアプリケーションの制作には、「理解するのに苦労しました」としつつも、審査員からは「完成度が非常に高い」「可能性を感じる」など高い評価が。結果、見事最優秀賞受賞!大会初の2連覇を達成されました。
千田さんは、現在高校3年生。今や常連校となった滝沢第二中学校の卒業生です。農業高校へ進学した後も、母校の後輩たちが熱心にプログラミングに取り組む姿に励まされ、学校の授業とはまったく別のところで、プログラミングを続けてきたと言います。4年連続ファイナリストの千田さんは、「プレッシャーはめちゃくちゃありました。でも、もうひたすらやるしかないという気持ちで制作に取り組んできました」と2連覇がかかっていた今大会について語ってくれました。プレッシャーを乗り越え、最高の形で、まさに有終の美を飾った千田さん。最後に、これからコンテストを目指す人たちへのメッセージを伺ってみると、「私は、このコンテストに出場して、人生が変わりました。ぜひ作品を作り上げて、一歩を踏み出してください」と力強く語ってくれました。本当におめでとうございました!
優秀賞
東京都 二ノ方 理仁さん
作品名「pinenut programming language」
2年前、小学3年生で初参加しU-15の部で審査員特別賞を受賞、小学5年生となった今年、再びファイナリストとしてこの場に戻ってきた二ノ方さん。今年は“プログラミング言語を作る”という難関に挑みました。もともと「使ってみて、楽しいと思うものがあると、自分でも作りたくなる」とのことで、プログラミング言語についても、2015年3月に初めてRubyを使った瞬間、「自分も言語を作ってみたい!」と思ったそう。その後、2015年に「Ruby合宿」に参加し、Rubyの生みの親まつもとゆきひろさんに直接、Rubyは何の言語でできているのかを尋ねてみたり、2年前のコンテストの副賞でもらった図書カードで、言語作りの本を買ってみたものの、当時は難しくて歯が立たなかったと言います。
そんな状況から大きく前進するきっかけとなったのは、2017年7月に合格した「IPAセキュリティ・キャンプ」に参加したこと。ここで初めて「自分でも言語が作れるかも!?」という手応えを感じ、そこから本格的にソースコードを書きはじめたんだそう。
Rubyについては、「使うと作りたくなるような心躍る言語。他の言語に比べ人間っぽい感じがする」と語る二ノ方さん。小学生ながら、2017年の春から1年間、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)のサイバートレーニングセンターSecHack365での研修に励むなど、これからの活躍が本当に楽しみな小学生です。
審査員特別賞
長野県松本工業高等学校電子工学部IoT班(長野県)
矢野達也さん、山岸直矢さん、湯川加苑さん
作品名「mrubyを使ったIoTシステム」
寸劇を取り入れた、躍動感あるプレゼンテーションで会場を沸かせたのは、矢野さん、山岸さん、湯川さんの高校3年生チーム。地域の問題解決するIoTシステムの制作に取り組み、初出場で堂々のファイナリストとなりました。彼らが取り組んだのは、交通調査を行うIoTシステムの制作です。今回は、センサーにmruby、データ解析にRubyを使用。Rubyを軽量化したmrubyを使って今回のシステムのハードウェアを制御することで、リアルタイム性を持ったシステムを作ることができたと言います。
同じ部活で仲がいいという3人の役割分担は、矢野さんがシステム、山岸さんが外装、湯川さんが外装とWebオープンデータを担当。プログラミングの魅力を尋ねてみたところ、「自分の作りたいものを実現できる」「同じものを作ろうと思っても、プログラムの書き方には個性が出る。そういうのも面白いと思う」「作りたいものを自分の手で作れるのが楽しい」と三者三様に語ってくれました。地域の課題を解決するIoTシステムを作った3人。今後の活躍も楽しみにしています!
特別講演
講演タイトル「つくりたい!が世界を変えていく!」
登壇者:タレント・エンジニア 池澤あやか氏
現在、タレント、そしてフリーランスのエンジニアとして活動しているという池澤さん。もともと、タレント業の「スキマ時間」を利用したいという気持ちではじめたプログラミングでしたが、大学の研究室や、プログラミング講座などを通して学ぶうちに、「自分のアイデア次第で、驚きや感動、そして笑いをも作ることができる素晴らしい道具と出会えた!」と実感したそうです。
池澤さんは、「プログラマーは、技術力を持っているだけではダメ」と指摘します。実は技術力と同じくらい、自分は何をしている人なのか、何をしたい人なのかを知ってもらう営業力も重要なんだとか。ただ、ひとえに営業力と言っても、何も飛び込み営業をするわけではありません。プログラマーが持っている技術力を、営業力に変えていくのだそう。例えば池澤さんの場合は、自分が作ったものを、定期的にSNSに発信したり、ポートフォリオを作って公開したり、スマートフォンに自分が作ったものの動画を入れておいて、初対面の人にもすぐに見せられるように準備していると言います。「こうすることで、人の印象にも残りやすく、同じことをやりたいと思っている人や、作って欲しいと思っている人から声がかかりやすくなるのです」。
それから「続けることの大切さ」についても語ってくれました。例えば、SNSでの発信については、「人は、一度見ただけでは、忘れてしまうもの。継続的に発信していくことで、人から思い出してもらえます。最初は反応がなくてやめたくなることもあるかも知れません。しかし、もしひとつでも当たれば、急に過去の投稿も価値が生まれる、ということだってあるんです」。
また「作り続けることの大切さ」については、「ひとりでやっていると、モチベーションが続かなくなることもあるでしょう。そんな時は、一歩外に出て、プログラミングの仲間を作ったり、今回のようなコンテストに応募してみたり、プログラミングが使えるアルバイトをしてみるのもいいでしょう。楽しく続けていくためには、“作り続けられる環境を整えること”も大事です」と呼びかけ、講演を終了しました。
講評・講演
講演タイトル「プログラミングの魔法」
登壇者:まつもとゆきひろ審査委員長
例年にも増してレベルが高かったという今大会。ゲーム部門の最優秀賞「ぴったり迷路」については、“1ドットのずれ”に着目したアイデアを高く評価。優秀賞の「わーにんぐ!」は「ワニ愛が感じられる発表。コミカルなワニが可愛らしかった」とコメントされました。さらに、今年から年齢での区分ではなく、「ゲーム部門」「クリエイティブ部門」となったことに触れ、「滝沢第二中学校については、並み居る高校生と戦わなくてはならないという点では、ハンデが大きい大会になったと思います。それにも関わらず、勉強の成績をあげるためのゲームを頑張って作ってくださった」と、その努力を評しました。
クリエイティブ部門については、松本工業高校のIoTシステム、二ノ方さんのプログラミング言語、千田さんの数式ノートと、「ジャンルが違うものに順位をつけるのは非常に難しかった」とし、授賞式が10分遅れるほど審査は難航。結果的に順位はついたものの、「3作品すべてに最優秀賞をあげたいくらい、どれも素晴らしかった」と述べられました。
講評の後は、いよいよまつもと審査委員長による講演「プログラミングの魔法」です。
まつもとさんがプログラミングをはじめたのは中学3年生の頃。シャープの「ポケットコンピュータ」で、プログラミングをしながらコンピュータを使うことを学んでいったといいます。当時は、「自分でプログラミングをしながら使うもの」であったコンピュータも、テクノロジーの進化とともに、既存のソフトウェアを入れれば、自分でプログラミングをしなくても使えるようになりました。しかし、自分でプログラミングをし、ソフトウェアを作ることができれば、既存のソフトウェアの枠にとどまらない、無限の可能性の中から選ぶ自由が得られるようになるとまつもとさんは指摘します。
「例えば、ゲームをしていて面白くないと思った時、プログラミングをしない人は、“ゲームをやめる”か“我慢してゲームを続ける”の二択しかありません。その一方で、自分でプログラミングをする人は“自分でルールを変え、ゲーム性を高める”という選択肢を作ることができます。これがまず、“プログラミングの力”です。それから、コンピュータは、私たちのイマジネーションを具現化する力もあります。例えばロールプレイングゲームの世界は、誰かが呪文を唱えて作ったわけではなく、プログラマーがプログラミングすることによって作り出した世界です。つまり、プログラミングができるということは、“世界を創造できる魔法を持っている”とも言えるのです」
ですが、今の時代、やろうと思えば誰もがプログラミングをはじめられるのにもかかわらず、しない人のほうが多い、とまつもとさんは言います。「ここには、“見えない謎の心の壁”があるんです。ですから、この“謎の心の壁”を越えられるかどうかがプログラミング適性であると私は考えています。みなさんのように、謎の壁を越えて作る側に回ってきた人たちは、本当に素晴らしいですし、MP(モチベーションポイント)、つまりやる気を持っています。様々な才能がある中で、この“やる気を持つ才能”が、最大の才能であると思います。ぜひこの才能を伸ばしていって欲しいです」と述べられました。
そして最後には、「一歩を踏み出すことで、自由はいつも目の前にあります。この先も、ぜひ自発的に何かを作り出すこと、自分で選択肢を作ることを選んで行ってください。あなたの選択が、自分の人生、周り、引いては世界を変えるかも知れません。そしてこの“世界をも変えることができること”こそが、プログラミングの魔法ではないかなと思います」と語り、講演を終了しました。
審査員奨励賞
吉田光さん
一次審査通過には至らなかったものの、今後活躍が期待できるとして、奨励賞が小学生の吉田光さんに送られました。吉田さんは、まちづくり三鷹が開催する「夏休みRubyプログラミング講座」に参加してプログラミングを学んだ一人です。受付横の体験コーナーでは、最終審査に残った各プログラミング作品と並んで吉田さんの「Run! Run!」も紹介されました。
閉会式
最後に、実行委員会副実行委員長で株式会社まちづくり三鷹の内田治代表取締役会長兼社長より閉会の挨拶が述べられ、第7回目のプログラミングコンテストの応募者へのお祝いとお礼、一年間を通して様々なご協力をいただいた協賛企業に対する感謝の意が述べられ、新たな区分で行われたRubyプログラミングコンテストは無事に閉会しました。
取材・文:釘宮 優子、山田 律子(株式会社ヴィブラント)/撮影:飯尾 亮悟(スタジオグリップ)