第9回中高生国際Rubyプログラミングコンテスト2019 in Mitaka

公開日 2020年02月13日

 

大会レポート


集合写真

 

開会式

主催者を代表して、井上浩実行委員長より、開会の挨拶がありました。

井上浩実行委員長
▲井上 浩 実行委員長

 

井上実行委員長は「中高生国際Rubyプログラミングコンテストの開催も9回になりました。歴史ある大会となってきました」と述べた上で、「103組のエントリーの中から選ばれた11組のみなさんは、最終審査会に残り、すでに大きな勝利を手にしています。今日は、リラックスして臨み、プレゼンテーションを楽しんでもらいたい」と、ファイナリストとなった発表者を励ましました。

来賓挨拶では、最初に文部科学省初等中等教育局情報教育振興室長の折笠史典(おりかさふみのり)様が登壇され、「最終審査会に残った作品には、実際に触ってみたい作品がたくさんありました。新たな社会「Society5.0」を見据え、新しい学習指導要領も始まり、これから学校でもプログラミングを学ぶ機会が増えていきます。今日、この場に残ったみなさんはプログラミングを完成させた時の達成感を忘れず、創造性と個性的な思考力を伸ばしていってください」と挨拶されました。

来賓挨拶 折笠 史典様
▲来賓挨拶 折笠 史典様
 文部科学省初等中等教育局情報教育・外国語教育課情報教育振興室長

 

また、経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課課長補佐の守谷学(もりやがく)様は、「IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)、ビックデータなどが社会を変えていく中、日本の企業を発展させていくためには、デジタル情報の力が不可欠です。国産のプログラミング言語であるRubyが、これからの日本を成長させていくものと期待しています」とお話された後、経済産業省が取り組む「未踏」などの事業を紹介したうえで、「これからも、若い力でたくさんのことに挑戦してほしい」とエールを送られました。

来賓挨拶 守谷 学様
▲来賓挨拶 守谷 学様
 経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課 課長補佐

 

最後に、総務省情報活用支援室様から、「これからみなさんがご活躍される時代にあっては、こうした新たなテクノロジーを如何に駆使して社会にイノベーションを起こしていくかが重要になります。本大会は自由な発想で切磋琢磨する意義深いものであります。我が国のイノベーションを担うみなさんにとって、実り多い機会となりますよう心から祈念し、ご活躍を期待しております」と、祝辞が贈られました。

 

応募者によるプレゼンテーション

ゲーム部門


最優秀賞 
滝沢第二中学校科学技術部 チーム 「ゴースト」(岩手県)
畠山 響さん
作品名「TOWER of GRIME REAPER」 

岩手県 畠山 響さん 作品名「TOWER of GRIME REAPER」 最優秀賞 

ゲーム部門で見事最優秀賞に輝いたのは、昨年、免疫を題材としたゲーム「Immunity's War」で審査員特別賞を受賞した中学3年生の畠山響さんです。今回、畠山さんが作ったのは、たくさんのギミックとブロックを使ったパズルを解き、宝箱から「鍵」を集めてゴールを目指すロールプレイングゲームです。ゲームのフィールドとなるダンジョンは、アイテムの松明を使用すると見えるエリアが広がるなど、数々の工夫が施されています。マップを作成するモードも用意されており、誰でも楽しめるゲームに仕上がっていました。審査員からも、「完成度が高い」と高評価を得ました。

畠山さんは、昨年、最優勝賞を逃した悔しさから1年かけて、今回のプログラム制作に打ち込んだそうです。視覚的効果にも工夫を凝らし、宝箱を開けるシーン1つをとっても7枚のエフェクト用画像を作成してアニメーションさせています。ゲーム全体での、エフェクト用画像は108枚になるそうです。インターネットなどで色々なゲームが、どのようなエフェクト効果を使用して迫力あるアクションを表現しているのか、勉強もされたそうです。今年、ついに納得のいく作品を完成させて、見事に最優秀賞受賞に輝くこととなりました。表彰を受けて、「今回、プログラミングをたくさん書きました。ただ量を多く書いただけでなく、ソースコードも読みやすくして、昨年のリベンジを果たすという目標を達成することができました。高校に進学しても、プログラミングを続けていきたいです」と力強く語ってくれました。



優秀賞
滝沢第二中学校科学技術部 チーム 「音(リズム)」(岩手県)
廣田 奈々恵さん、保木 希星さん
作品名「OTOZUMU(オトズム)」
廣田 奈々恵さん、保木 希星さん 作品名「OTOZUMU(オトズム)」 優秀賞

主人公が音楽に合わせ、敵を倒すゲームを制作してファイナリストになったのは、プログラム担当の廣田奈々恵さんと、画像担当の保木希星さんの男女ペアです。ふたりが作った「OTOZUMU(オトズム)」は、リズムに合わせ、現われる文字を正確にキーボードで叩くことによって、ポイントを稼いでいくゲームです。「ラ」の音を基準音として、音のサンプル波形を算出して、滝沢第二中学校の校歌などを数値化したそうです。コンボ数によって敵にダメージを与えるなど、完成度の高い作品ができました。12月開催の本コンテストに合わせ、冬っぽいイメージに仕上げるなど、画像担当の保木さんは細部にもこだわっています。審査員からは、「音楽を使ったゲームを作るのはたいへん難しいので、音ゲーに挑戦したのは素晴らしい」と、感嘆の声が寄せられました。

本コンテスト最終審査会、唯一の男女ペアチームでの出場となったチーム「音(リズム)」のふたり、廣田さんと保木さんは小学生の時からの幼なじみ。夏休みからチームを組み、見事に優秀賞を獲得されました。「楽譜のデータをプログラムに換え、「浦島太郎」などの馴染みの曲をゲームにできて楽しかったです」と、楽しみながらプログラミングに挑戦できたようです。



審査員特別賞
滝沢第二中学校科学技術部 チーム 「ワード」(岩手県)
金沢侑馬さん、伊藤成海さん
作品名「もじつみ」


金沢侑馬さん、伊藤成海さん 作品名「もじつみ」 審査員特別賞
   

金沢侑馬さんと伊藤成海さんは、本コンテストの常連校である滝沢第二中学校科学技術部の3年生。今回、ふたりが作ったのは、「もじつみ」という制限時間内に文字を並べて、名詞(単語)を作り、つなげて得点を稼いくゲームです。文字の置ける場所を自由に決められるので、自由に言葉を作ることができ、長い言葉ほど高得点になり、制限時間を60秒に設定して、完成した文字ブロックの数に応じて、得点が3倍、5倍となるなど、工夫がされていました。クロスワードパズルと似ていますが、紙のクロスワードでは体感できないおもしろみがあり夢中になってしまうゲームです。プレゼン冒頭のゲームの紹介では、「み」「た」「か」という正解を紹介するなど、プログラミングだけでなくプレゼンテーションも含め、色々アイデアを出し合ったのがうかがえます。完成度が高く、「楽しいアイデアが良かった」「独自性が高い」と、審査員からも高い評価を得ていました。

「今後は、プレイヤーの立場に立って配置を考えることや、辞書機能を充実させてたくさんの漢字も増やしていきたい」と、冷静にプログラムの改善に前向きな発言をしてくれました。



審査員特別賞
滝沢第二中学校科学技術部 チーム「インディ」(岩手県)
村山徹さん、尾友勇翔さん
作品名「棒の冒険」

村山徹さん、尾友勇翔さん 作品名「棒の冒険」 審査員特別賞
   

素材担当の村山徹さんと、プログラミング担当の尾友勇翔さんの中学3年生コンビで、見事入賞を果たしたチーム「インディ」のふたり。今回、ふたりが作ったのは、キャラクターを操作して、ブロックで構成された画面にある宝を取りに行くというゲームです。「ステージ作りにこだわっていて、5段階のレベルがあります」とふたり。制作時はステージとなる棒の配置を「#」、スタート地点を大文字の「S」、ゴール地点を大文字の「G」として、画面上に配置して簡単にプログラムできるように工夫をしました。ゲームは単純な移動だけでなく、キャラクターがダッシュしたり、ジャンプしたりして進まないと攻略できないようになっています。初めは、キャラクターが斜めに進んでしまったり、ブロックをすり抜けてしまったりと、不自然な動きをしてしまい、それを制御するのにたいへん苦労されたそうです。「ブロックとキャラクターのあたり判定を工夫することで、問題を解決することができました」と尾友さん。結果、難しいけど近道や、やさしいけど遠回りと、攻略方法もいくつか選択できるゲームに仕上がっていました。

この「棒の冒険」のプログラミング制作中に体調を崩したという村山さんは、「ゲーム作りには計画をしっかり立て、タスク管理が大事です。特に体調管理が重要です!」と、苦い経験から多くを学んだようです。



審査員特別賞
島根県立松江商業高等学校 情報処理科(島根県)
長谷川 愛実さん
作品名「あんゆーシューティング」
長谷川 愛実さん 作品名「あんゆーシューティング」 審査員特別賞

単独女子の応募で、唯一ファイナリストとなった、高校3年生の長谷川 愛実さん。今回、長谷川さんが作ったのは、タイピングをして的を撃つシューティングゲームです。現われる爆弾やお金に書かれたアルファベットを、正確にタイピングすることで撃っていきます。制限時間は20秒で、800点を超えるとクリアとなります。お金が20点、爆弾が10点なので、800点はなかなか難しそうです。制限時間を超えるとゲームオーバーになってしまい、爆弾を5発撃ち漏らすと同じくゲームオーバーになってしまいます。ノーミスで見事クリアすると「パーフェクト」の文字が表示されます。なかなか完成度も高いようですが、長谷川さんは「アルファベット以外のキー入力で遊べるようにしたり、ミスタイプの集計やアニメ効果も追加したりしていきたい」と今後の抱負を語っていました。

今回のゲーム制作では、「バグばっかりで嫌になった」と少し愚痴をこぼしていた長谷川さんですが、友達にゲームを体験してもらった時に、「難しいよ!!と言いながらも、みんなが楽しそうにゲームをしてくれたことが嬉しかった」と、バグを苦労して解消したことで、報われる瞬間があったことを笑顔で語ってくれました。バグとり、お疲れさまでした。
 

 



審査員特別賞
愛媛県立松山工業高等学校(愛媛県)
千原 安司さん
作品名「アローダンジョン」

千原 安司さん 作品名「アローダンジョン」 審査員特別賞
   

6組目に登壇の高校3年生・千原 安司さんのプレゼンテーションでは、次の登壇する同じ高校の福永 蓮さんが、パソコン操作を手伝っての発表となりました。発表する「アローダンジョン」は、ミッションをクリアして敵のボスを倒すと、次のステージへ進めるロールプレイングゲームです。ダンジョンには、様々なアイテムやショップなども設置されていて、キャラクターを強化することも可能です。敵とのバトルでは、指定された「矢印の向き」と入力した「キー」が同じなら攻撃が成功します。敵の攻撃に対しては、画面に現れる「矢印の向き」を記憶しておき、同じ「キー」を入力すると防御することができます。「ゲームには、敵の攻撃の「矢印の向き」を記憶しておかないといけないという「脳トレ」的な要素も組み入れました」と千原さん。

「アイデアが良いと思った」「ダンジョンの作りも、バトルシーンも良かった」と、審査員からは好評価なコメントが寄せられていました。千原さんは、「ゲームに登場するショップシーンで使用しているBGMは、4曲ともオリジナル曲です」と、今回の「アローダンジョン」のオリジナリティの高さを誇らしげに語ってくれました。「最優秀賞を獲ることができなかったのは悔しいけれど、今日プレゼンすることができて良かった。これからもプログラミングライフを楽しんでいきたい」とのこと、これからの活躍にも期待しています。

 



審査員特別賞
愛媛県立松山工業高等学校(愛媛県)
福永 蓮さん
作品名「Create Route」
福永 蓮さん 作品名「Create Route」 審査員特別賞

ゲーム部門最後の登壇となった高校3年生・福永 蓮さんのプレゼンテーションでは、直前に登壇した千原さんが、パソコン操作を手伝っての発表です。福永さんが作ったのは、「Create Route」という、制限移動回数までに、マップ上の全ての床を色で塗り潰していくとクリアとなるゲームです。プレイヤーは12×12のマス目のマップの中を、直進しかできないキャラクターが移動させてマス目を塗りつぶしていきます。キャラクターは直進しかできないのですが、床を左クリックすることで、その場所に新しい壁を設置することができます。壁に当たることで進行方向を変え、新しい道を作ることができます。福永さんは、「マップ制作では、保存条件を考え、そのプログラミングに苦労しました」と語り、多くの人に繰り返し遊んでもらえるように、シンプルでもオリジナリティのあるゲーム作りを目指し見事完成させました。

高校卒業後についても、同じ高校の千原さん同様に、「これからもプログラミングを頑張っていきたいと思いました」と、答えてくれました。これからの活躍にも期待しています。


クリエイティブ部門

 
最優秀賞
兵庫県 高校1年 伊藤 貴之さん
作品名「Denser」

伊藤 貴之さん 作品名「Denser」 最優秀賞
   

クリエイティブ部門で見事最優秀賞に輝いたのは、Twitterのような感覚で簡単に使えるブログサービスアプリ「Denser」です。「Twitterもたいへん便利ですが、140ワードの文字制限があるため文字数が足りないなと感じることがよくあります。そこで、ある程度の文字制限があっても、そのままテキストを自由に書けるアプリがほしいと思い続けていました」と、ブログサービスアプリのプログラミングをしようと思ったキッカケを語ってくれました。また、既存のSNSとの違いでは「文字制限を超えられる」ほかに、「投稿の感情判定機能」と「投稿後の編集が可能」としています。

まつもと ゆきひろさんからも「同じような意見を言う人だけが固まってしまう「エコーチェンバー現象」と、あの有名な人が言っているから正しいに違いないっていう「ハロー効果」を避けるための工夫がされている点、ネガティブ、ポジティブの判定が出来、自分のためのデザインが出来るなど、非常に興味深いと思いました。今後、自然言語処理も含めて発展させていきたいと言うことですので、もしかすると、日本から出た新しい形のマイクロブログとして「Denser」という名前が、あと数年後に有名になっているかも知れないと、非常に期待が持てました」と高い評価をいただきました。
「4月からRubyを使用したアプリ開発の勉強を独学で始めて、9月末に完成という短期間で完成することができました」と伊藤さん、投稿ユーザーより文章の内容を重視するというしっかりした着目点があったからこその開発スピードだったのかもしれません。見事、最優秀賞を受賞しました。この結果には「まさか最優秀賞をとれるとは思っていなかったのでびっくりしました」と驚きつつも、「自分の作りたいものを作れたのが一番うれしいです」と喜びを語ってくれました。

 



優秀賞 
長野県松本工業高等学校 電子工学部 サムムとゆかいな二人組
寺島 希羽さん、金井 晴一さん
作品名「全方向移動ロボット通信制御プログラム」
   
寺島 希羽さん、金井 晴一さん 作品名「全方向移動ロボット通信制御プログラム」 優秀賞

無線通信を利用して全方向に移動可能なネットワークカメラのシステムです。このシステムは人の入れない場所や危険な場所の探査やライブカメラの置き換えを目的として作成されました。mrubyでプログラミング可能なマイコンボードGR-CITRUSを使用し、IoT通信モジュールより受信した命令をシリアル通信でGR-CITRUSに送信し、受信した通信をプログラムにてモータードライバを操作することで移動を可能にしています。配信部にはYoutubeを利用していて、デモンストレーション用のVRゴーグルを審査員に実際に見てもらうなど、プレゼンテーションも工夫しました」と、全方向移動可能なロボットと共にプログラム作品を紹介してくれました。さらに、「災害現場など、人の入っていけないような危険なところでも活躍するシステムに出来ると考えています」と、将来に向けたアイデアも教えてくれました。

今回のプログラミングにかけた期間は3ヶ月ほどだったそうです。「Rubyについては、以前からビジュアル・プログラミングツールの「スモウルビー」を使用した経験があったので、すんなり入ることができました」というふたり。今後も「ロボットシステムのすばらしさを伝えていきたい」と熱意を語ってくれました。


審査員特別賞、Matz(マッツ)賞
愛媛県立松山工業高等学校 チーム松工(愛媛県)
井上 裕さん、林 晃太郎さん
作品名「プログラムファイターズ & スクラッチ」

井上 裕さん、林 晃太郎さん 作品名「プログラムファイターズ & スクラッチ」 審査員特別賞、Matz(マッツ)賞
   

「プログラムの楽しさを広めたい」という思いで、ゲームAI入門というべきプログラミングに取り組んだ高校2年生の井上さんと林さん。「プログラムファイターズ & スクラッチ」は、敵と得点を競い合うプログラムを自分で作成して、プログラムを勉強する初心者のための「Ruby学習用ソフト」です。キャラクターの動作をScratchのようなパーツを組み合わせることで作成します。ゲーム部分ではマップ上にあるアイテムを取得したり、早くゴールしたりするなど、様々な行動をとり、得点を重ねていきます。

惜しくも審査員特別賞となりましたが、まつもと審査員長による「Matz(マッツ)賞」を見事獲得されました。井上さんはMatz賞をいただいたことを励みに、「来年には、よりよいものにしていきたい」と来年に向けた抱負を語られました。一方の林さんはプレゼンを振り返り、「伝わるように頑張りましたが、どんどん時間が過ぎていって、上手く伝えることができなかった」と悔しさを覗かせました。夏休み前に先生から、「中高生国際Rubyプログラミングコンテストのクリエイティブ部門に応募してみないか」と声を掛けられ、やってきたというふたり、「来年はさらに上の賞を目指して頑張りたい」とその意気込みを語ってくれました。

 


審査員特別賞
アメリカ William Yamada(ウイリアム ヤマダ)さん
作品名「How Good are you Drawing?」

 作品名「How Good are you Drawing?」 
   

アメリカのロサンゼルスから応募されファイナリストとなったWilliam Yamadaさんは、ご本人が作成したビデオによるプレゼンとなりました。作品の説明は、本実行委員会の構成団体である株式会社DIVE INTO CODEの野呂浩良さんが代理で行いました。

「How Good are you Drawing?」は自作のお絵描きソフトで描いた絵をAIを使用して判定するプログラムです。 特徴としては多言語対応(英語、日本語、スペイン語)、GoogleAPIを使用、拡張性(言語の追加、画材の追加)があげられます。

プレゼンではGoogleVisionAPIを使用しての感想やRubyのパワフルさをお話ししていました。
将来的には、ユーザーの絵の能力を評価する部分と、GoogleAPIの解析能力をテストする部分は分割しようと考えていると話していました。

 


 

特別講演


講演タイトル「好き!が世界を変えていく」
登壇者:Microsoftクラウド・デベロッパー・アドボケイト 千代田 まどか 氏

Microsoftクラウド・デベロッパー・アドボケイト 千代田 まどか 氏
  

「みなさん、素晴らしい作品をありがとうございました。プレゼンを聞きながら、写真撮りまくってツイートしました」と、プレゼン中にファイナリストたちの様子をツイートしていたと千代田さん。初めに各ファイナリストの作品に触れ、講評してくださいました。中でも「棒の冒険」の軽快な動きを讃え、「滑るブロックがあるけれど、実際に作るのって凄い。シンプルに楽しいので寝ずに3日はできそう」と絶賛していただきました。

「ちょまどって、言われています。文系出身で数学がすごく苦手です」と、軽快な口調で講演がスタートしました。

「絵を描くのが大好きで、たとえばこんな絵を描いています」と、自身で描いた絵がスクリーンに映し出され、ファイナリストのみんなから歓声が挙がりました。中でも「C#」というプログラミング言語を擬人化した絵には会場全体が湧きました。「普段は、ライブコーディングや開発者とのコミュニケーションをとるのが仕事です」

幼少期に深刻な小児喘息で入院していたこと。中学時代は、「ハリーポッター」にハマり、英語版を手に入れ独学で英語の勉強。高校時代は、プログラミングへ続く道との出会いがあり、さらにこの時代の友達への布教活動の経験が、今の仕事での会話に役に立っているそうです。大学時代に最初は初心者向けのプログラミングについての本も読めず、それでも「なるほど」と思えるとどんどん楽しくなりました。その後、ITイベントの自己紹介で、「本業はプログラミングで、技術的な知識を生かした漫画を描いて、それと一緒にプログラミングの楽しさを広めたいです」と話したら、マイクロソフトの方がいて、入社面接に誘われ、技術を解りやすく人に教えるテクニカル・エバンジェリストとして日本マイクロソフト社に入社しました。「最初は人前に出られなくて、本番前、机の下に隠れてガタガタ震えていました。それでも頑張り、デベロッパーサミットのベストスピーカー賞1位を受賞しました。」と千代田さん。

「これからの世界を創るみなさんにお伝えしたいことは3つ。1つ、好きで打ち込めることを探して欲しい。2つ、あなたの人生です。お母さんの人生でも、先生の人生でもありません。3つ、follow your heart(心に従ってほしい)」です。オタクというとネガティブな印象を持たれますが、私はオタクを尊敬しています。ITが世界を変え、プログラミングが出来ることは可能性が無限大です。あなた達にこのまま頑張って欲しいです」と、講演の最後に、ファイナリストたちにエールを送られました。

 


講評・講演

講演タイトル「プログラミングの可能性」
登壇者:まつもと ゆきひろ 審査委員長

まつもと ゆきひろ 審査委員長

講演の前に、今大会の講評がまつもと審査員長より行われました。「今年はゲーム部門で新しいアイデアの工夫があり、クリエイティブ部門も興味深い面白いものがたくさんありました。「もじつみ」は、一人遊びの出来るゲームとして非常に良いと思いました。クリエイティブ部門の「Denser」は、日本から出たマイクロブログと呼ばれる日が来るかも知れないと期待が持てました。そして、「全方向移動ロボット通信制御プログラム」も非常に良かった。m-Rubyを使ってくれて、ありがとうございます。また数年後には、「プログラムファイターズ&スクラッチ」の後継プログラムがスモウルビー甲子園で採用されるのではないでしょうか。今後も引き続き、今のプログラムを改善し、あるいは全く新しいものに挑戦してみてください」と、それぞれの作品を称え、エールを送られました。

その後、講演「プログラミングの可能性」に続きます。「ソフトウェアによって世界を創るということ、それは体験を作ること、ソフトを使っている時の気持ちを作ることで、ソフトのルールを作ることが、世界を創るってことじゃないかと思っています。ターゲットユーザーに対してどんな気持ちを与えるべきかを想像するイマジネーションと、それを現実世界に与える技術が必要になってきます。」と、プログラミングという創造手段への考えを紹介してくださいました。

そして、これまでのRuby開発についてのお話をされてから、「プログラミングは、パソコン1つあればできます。ひとりで、または少数で出来ます。ほかの創造するものと違って、継続的な創造が多く、Rubyも誕生から26年経ちますが、毎日のように何か変更しています。それって、絵画や小説では起こりにくいことです。また、協力体制の文化があり、なんでも一人でやるのではなく、適切なライセンスをかけた世界に公開することで、「みんなで一緒に開発しましょう」という文化が育ちました。これは、ほかのクリエイションにはあまりありません。さらに、そのコニュニティを支援するサービスもあります。コンピュータによって世界を創造することが出来ること、その世界を世界中に配ることが出来ること、これが「プログラミングの可能性」だと思います。インターネットとコンピュータの性能が上がり、プログラミングの可能性はますます広がっています。プログラミングを知って、世界を創ることを知って、その世界にみんなを招くことを生まれながらに知っているみなさんが、新しいプログラミングの世界を切り開いていくのではないでしょうか」と、若い世代への期待を述べられ、講演を終了しました。


 

閉会式

本コンテスト実行委員会副実行委員長で、株式会社まちづくり三鷹 取締役副社長の吉田純夫より閉会の挨拶がありました。

吉田純夫副実行委員長

吉田副実行委員長はまず、「9回目の開催となった今年は、応募総数103組と過去最高だった」ことに触れ、その中で最終審査会に残った11組を讃えました。「みなさんは、これから社会を担っていく人材であります。今後、プログラマーとして飛躍してほしい」期待を述べられた後、応募者をはじめ、協賛いただいた企業、運営に携わった実行委員へ感謝の意を表し、第9回目のプログラミングコンテストは無事に閉会しました。


取材・文:山田 浩之(株式会社ヴィブラント)/撮影:鈴木 智哉(キリンニジイロ)