第14回中高生国際Rubyプログラミングコンテスト2024 in Mitaka 最終審査会

公開日 2025年02月21日

大会レポート

集合写真 

2024年11月30日(土)、「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト2024 in Mitaka」の最終審査会が三鷹産業プラザで開催されました。

本コンテストは、国産プログラミング言語「Ruby」の普及と教育を推進する11団体で構成された実行委員会によって運営され、今年で14回目を迎えます。最終審査には、全国から寄せられた137件の応募作品の中から厳正な審査を経て選ばれた、ゲーム部門4作品、Webアプリ・IoT部門5作品の計9作品が進出しました。

開会式

まずは、中高生国際Rubyプログラミングコンテスト実行委員会の実行委員長であり、OSS-Vision株式会社代表取締役CEOの井上浩氏による開会の挨拶です。井上実行委員長は、開催に尽力した関係者への感謝を述べるとともに、137件の応募作品の中から選ばれた9作品が今日の舞台に立っていることや、発表者に向けて、努力の成果を存分に発揮し、この場を楽しんでほしいというエールを送りました。

井上浩 実行委員長
▲井上 浩 実行委員長

続いて、経済産業省、総務省、文部科学省による祝辞が続き、それぞれがプログラミング教育の重要性や若手エンジニアへの期待を語りました。生成AIやデジタル技術が急速に進化する現代社会において、本大会の発表者たちがこれからの未来を担う存在であるというメッセージが印象的でした。

審査委員の紹介では、Rubyの生みの親であるまつもとゆきひろ審査委員長をはじめ、野田哲夫氏(島根大学法文学部 法経学科 教授)、田中和明氏(九州工業大学大学院情報工学研究院 准教授)、笹田耕一氏(STORES 株式会社 フルタイムRubyコミッター)、高橋征義氏(一般社団法人日本Rubyの会 代表理事)、森正弥氏(東北大学 特任教授・日本ディープラーニング協会顧問)、江森真由美氏(株式会社ケーシーエスキャロット 執行役員)が紹介され、発表者への期待が込められた温かい言葉が贈られました。

さらに株式会社ソニックガーデン、株式会社永和システムマネジメント、ピクシブ株式会社、株式会社O.S.Aのスポンサーの紹介と、各企業から励ましの言葉が続き、発表者の皆さんへの期待の高さが伺えました。

最後に、発表者たちの紹介が行われました。それぞれ、緊張と期待が入り混じった表情でしたが、元気に立ち上がり、意気込みを示しました。

ガッツポーズ   ガッツポーズ   ガッツポーズ

アンカー発表者によるプレゼンテーション

ゲーム部門


最優秀賞/O.S.A技術賞
愛媛県立松山工業高等学校 山室 優雅さん(愛媛県)
作品名「Robot hunting」

愛媛県立松山工業高等学校_山室 優雅(愛媛県) 作品名「Robot hunting」  愛媛県立松山工業高等学校_山室 優雅(愛媛県) 作品名「Robot hunting」  愛媛県立松山工業高等学校_山室 優雅(愛媛県) 作品名「Robot hunting」  

【発表内容】
山室優雅さんが製作した「Robot hunting」は、横スクロール型のアクションゲームです。プレイヤーがジャンプや銃撃、さらには弾丸の切り替えなど、さまざまなアクションを駆使してステージを攻略していきます。基礎的なジャンルでありながら、独自の工夫を盛り込み、質の高い作品に仕上げた点が注目を集めました。

特に、ゲーム内で使用されるキャラクターや背景のドット絵デザインは、山室さんが手作業で制作したもので、視覚的に高い完成度を誇ります。背景の奥行き感や立体感を効果的に表現しており、ゲーム全体の雰囲気を引き立てています。

背景スクロールのスピードや明暗調整を駆使して遠近感を出す技術は、審査員からも「簡潔なプログラムでこれほどの効果を出している点が素晴らしい」と高い評価を受けました。

【質疑応答】

審査委員から制作過程やゲームデザインに関する具体的な質問が飛び交いました。高橋審査委員は難易度調整の具体的なアイデアについて尋ね、山室さんは敵の出現パターンをランダムから固定に変更する意向を述べました。

【表彰式】

「Robot hunting」はゲーム部門で最優秀賞に選ばれ、その完成度の高さと細部へのこだわりが評価されました。田中審査委員は「作品全体の作り込みが素晴らしく、滑らかなスクロールやキャラクターの挙動に細やかな配慮が感じられる」とコメント。また、技術的な課題を克服しながら完成させた山室さんの努力に敬意を表しました。

山室さんは「最優秀賞をいただけて本当に嬉しい。Rubyの勉強を続け、より良い作品を作りたいです」と力強く語りました。



優秀賞
愛媛県立松山工業高等学校 野原 嘉人さん
作品名「GHOST HOUSE」

愛媛県立松山工業高等学校_野原嘉人 作品名「GHOST HOUSE」  愛媛県立松山工業高等学校_野原嘉人 作品名「GHOST HOUSE」 愛媛県立松山工業高等学校_野原嘉人 作品名「GHOST HOUSE」

【発表内容】
野原嘉人さんの「GHOST HOUSE」は、館内を探索しながらオバケを光で照らして倒し、脱出を目指すホラーアクションゲームです。RPG要素も取り入れた本作では、タンスを調べてアイテムを収集したり、エンカウント方式を選択してゲーム進行を調整したりすることができます。プレイヤーはオバケの種類や行動特性を見極め、館内を自由に探索しながら冒険を楽しむ設計になっています。
野原さんはデモプレイを交えながら、多彩な特徴や工夫を説明しました。
・プレイヤーの行動や選択によってエンディングが変化し、何度でも遊べる仕組みを構築した、マルチエンディング。
・異なる能力を持たせ、プレイヤーに戦略的な駆け引きを求める個性豊かなデザインの敵キャラクター。
・DXRubyライブラリの制約を超えるため、仮想Z軸を作成し、奥行きを感じさせる擬似的な3D表現描画の実現。

また、Fiberクラス乱数を利用したランダム要素の調整に取り組んだ点についても詳しく解説しました。

【質疑応答】

審査委員からは、「Fiberクラスを使った滑らかな移動」や「仮想Z軸の構築」について高い関心が寄せられました。まつもと審査委員長からはランダムエンカウントに関する仕組みや、友人からのフィードバックを基にゲーム仕様を改善したエピソードに対して賞賛の声が上がりました。

【表彰式】

「GHOST HOUSE」は、技術的な工夫や発想力が評価され、優秀賞に輝きました。笹田審査委員は「細部にわたる技術的な工夫や完成度の高さが素晴らしい」とコメントしました。

野原さんは「優秀賞をありがとうございます。後輩の成長を感じられたことも嬉しいです」と、山室さんの最優秀賞受賞へ祝福も添えました。



審査員特別賞
愛媛県立松山工業高等学校 秋山 宗太郎さん(愛媛県)
作品名「Zoo」
愛媛県立松山工業高等学校_秋山宗太郎 作品名「Zoo」  愛媛県立松山工業高等学校_秋山宗太郎 作品名「Zoo」  愛媛県立松山工業高等学校_秋山宗太郎 作品名「Zoo」     

【発表内容】

秋山宗太郎さんの「Zoo」は、動物園を舞台に、職員を動かして動物のお世話をしながらお金を集め、職員を育成していくシミュレーションゲームです。FPSのような瞬発力を必要とせず、幅広い年齢層が楽しめる内容になっており、RPG要素や管理システムが加わった独自の魅力が特徴です。

職員のデザインはランダム生成で、髪型や髪色、顔のパーツで構成されており、ユニークなキャラクターたちがゲームに彩りを添えます。また、動物には「機嫌値」や「好感度」が設定されており、不適切な対応をすると機嫌が悪化して脱走することもあるため、プレイヤーは細かい注意が求められ、ゲームに緊張感とリアリティを持たせています。

秋山さんは、特に動物の脱走やステータス管理、職員と動物のバランス調整に多くの時間を費やしたと語り、こうした工夫と努力が、ゲーム全体の完成度を高める結果に繋がりました。

【質疑応答】

審査委員からは、2人のキャラクターを同時に操作する仕組みやゲームのクリア条件に関する質問が寄せられました。江森審査委員からは、動物のダメージシステムの発想がユニークで新鮮だという意見も出ました。

【表彰式】

「Zoo」は、独創性と拡張性が評価され、審査員特別賞を受賞しました。野田審査委員は「独創的で拡張性があり、作る楽しさも感じられるゲーム」と評し、さらなる発展を期待するとコメントしました。

秋山さんは「未完成でも特別賞をいただけたので、完成すれば最優秀賞を目指せる」と次の目標を語りました。



審査員特別賞/Matz賞
滝沢市立滝沢第二中学校 科学技術部 チーム「@(アットマーク)」 古川 智紘さん(岩手県)
作品名「マルバツ」
滝沢市立滝沢第二中学校科学技術部チーム「@」 作品名「マルバツ」  滝沢市立滝沢第二中学校科学技術部チーム「@」(岩手県)  作品名「マルバツ」   滝沢市立滝沢第二中学校科学技術部チーム「@」(岩手県)  作品名「マルバツ」   滝沢市立滝沢第二中学校科学技術部チーム「@」(岩手県)  作品名「マルバツ」       

【発表内容】

チーム「@(アットマーク)」の「マルバツ」は、タテ・ヨコ・ナナメに4つの◯か×を揃えることで勝利を目指す対戦型ゲームです。シンプルなルールながら、戦略性を高める多彩なアイテムが導入されており、奥深いプレイ体験を提供します。アイテムには、盤面を戦略的に変化させる効果があり、爆弾(2マス下を破壊)、ケムリ(視界を奪う)、トケイ(一定時間で消滅する)、カーモ(◯と×の見た目を反転させる)など、プレイヤーに多様な選択肢を与えます。

さらに、「マルバツ」はUIデザインにも注力されており、直感的で分かりやすい操作性が特徴です。特に、「片手モード」ではWASDキーを使ったカーソル操作が可能で、右利き・左利きどちらにも対応する工夫がされています。

今後の課題として、CPU戦や効率的なコード構造への改良を挙げており、さらに奥深い対戦型ゲームへの進化が期待されます。

【質疑応答】

審査員からは、ゲームの戦略性やUI設計に関する質問が寄せられました。

田中審査委員は「実際に対戦してみたときの感触」について尋ね、ランダム要素や戦略性がプレイヤー同士の駆け引きを生み出している点が評価されました。

【表彰式】

チーム「@(アットマーク)」は「マルバツ」で審査員特別賞とMatz賞に輝きました。江森審査委員は「シンプルながらも戦略性が高く、中毒性のある楽しいゲーム」と高く評価し、今後のさらなる活躍を期待するとコメントしました。


Webアプリ・IoT部門


最優秀賞
西原 実咲さん(群馬県)
作品名「EmoTrack」

西原 実咲(群馬県) 作品名「EmoTrack」 西原 実咲(群馬県) 作品名「EmoTrack」 西原 実咲(群馬県) 作品名「EmoTrack」   

【発表内容】

西原実咲さんが制作した「EmoTrack」は、声を使ってストレスを客観的に測定し、その結果に基づいてリラックス効果のある音楽を推薦するWebアプリです。ユーザーが日常生活の中でストレスに気づき、適切に対処できるよう支援する目的で設計されました。


主な機能は3つです。
【機種依存文字】音声解析にAmiVoice APIを使用し、不随意感情を基にストレスを客観的に測定。客観的なストレス評価により自分のストレス状態を正確に把握できる。
【機種依存文字】安静時の心拍数に近い60〜80BPMの音楽をストレス値に応じて音楽を推薦。推薦された音楽はSpotifyに接続し、すぐに再生可能。
【機種依存文字】日々の出来事と感情を記録できる「感情日記」機能を搭載。音声を録音すると、自動的に文字起こしされ、手間をかけずに日記をつけることができる。

また、長期的なストレスの変化を確認する統計ページも備わっており、自己管理を支援する実用性が高く評価されました。

【質疑応答】

質疑応答では、音声解析の仕組みやアプリの技術的な実装についての質問が審査委員から寄せられました。笹田審査委員は、音声解析を外部処理として実行する仕組みについての質問を通じて、その効率化の工夫を評価しました。

【表彰式】

「EmoTrack」は、その完成度の高さと独創的なアイデアが評価され、最優秀賞に選ばれました。笹田審査委員は、「感情の分析だけでなく、音楽推薦や感情日記などの多様な機能を組み合わせた統合性が高く、継続的な利用を促進する仕組みが見事」とコメント。さらなるブラッシュアップへの期待も語りました。

西原さんは、「初めて本格的に開発したアプリでこのような評価をいただけたことが本当に嬉しい」と感謝の気持ちを述べるとともに、今後もプログラミングを続けていきたいと話しました。


優秀賞/ソニックガーデン賞
小泉 愛さん(東京都)
作品名「VisPhys」

小泉 愛(東京都) 作品名「VisPhys」 小泉 愛(東京都) 作品名「VisPhys」 小泉 愛(東京都) 作品名「VisPhys」   

【発表内容】

小泉愛さんが制作した「VisPhys」は、物理学習を支援するためのシミュレーションサイトです。物理の問題(力学分野)に登場する状況を視覚的に再現することで、楽しみながら学べる学習環境を提供します。

小泉さんは制作の背景について、物理の授業で「動きがイメージできずに問題を理解しにくい」という経験をしたことがきっかけだったと語りました。

「VisPhys」は物理の典型的な12種類の問題をリアルタイムでシミュレーションできる機能を搭載しており、反発係数や速度、質量などの変数を自由にカスタマイズし、変化による動きを観察可能となっています。また、シミュレーション結果を保存・共有でき、他のユーザーとリアルタイムで画面に書き込みを行うことが可能です。

技術的には、描画にMatter.jsを、キャンバス操作にはFabric.jsを活用。また、リアルタイムでの共有機能を実現するためにRubyのWebSocketを使用し、スムーズなコラボレーションを可能にしています。

【質疑応答】

審査委員からは、テンプレート作成の背景や将来的な機能拡張に関する質問が寄せられました。野田審査委員は「12種類のテンプレートはどのように作成したのか」と質問し、小泉さんが物理問題集を参考に一つずつ手作業で作成したことを高く評価しました。

【表彰式】

「VisPhys」は、実用性と学習支援の観点から優秀賞とソニックガーデン賞を受賞しました。審査委員からも「視覚的に物理の学びを支援する革新性のあるツール」「学習者同士の共有を可能にする発展性の高さ」が評価され、今後の機能拡張にも期待が寄せられました。

小泉さんは「このような賞をいただけてとても嬉しいです。プログラミングスクールの先生方や家族に感謝の気持ちを伝えたい」と感謝を述べました。


審査員特別賞/Matz賞/ピクシブ賞
椎葉 友渚(東京都)
作品名「マイプロフ帳」

椎葉 友渚(東京都) 作品名「マイプロフ帳」 椎葉 友渚(東京都) 作品名「マイプロフ帳」 椎葉 友渚(東京都) 作品名「マイプロフ帳」 

【発表内容】

椎葉友渚さんが制作した「マイプロフ帳」は、オンラインでプロフィール帳の交換を可能にするWebアプリです。プロフィール帳は、名前や趣味、好きなものなどを記入し合い、友達同士で共有する紙媒体の文化をデジタル化したもので、新学期などで友達を作るきっかけを提供することを目的としています。

発表ではプロフィール帳がもたらす交流効果について、小学校時代の実体験を交えて説明。「プロフ帳は、初対面の人と話すきっかけを作り、人間関係を広げる手助けをしてくれる」と語り、デジタル版の利便性と可能性を強調しました。

「マイプロフ帳」はカラーテーマやスタンプを選べるほか、質問項目を自由にカスタマイズ可能で、プロフィール情報の交換は一対一の通信形式(ユニキャスト)で行い、データは暗号化されるため安心して利用できるます。また、作成から共有、編集まで、誰でも簡単に操作できるシンプルで直感的な設計が施されています。

【質疑応答】

審査委員からはプロフ帳の設計や技術的工夫について質問がありました。田中審査委員は「レイアウト変更の実現方法」を尋ね、椎葉さんは「JavaScriptとRubyを使った仕組み」と答えました。高橋審査委員は「非同期通信の導入計画」を尋ね、椎葉さんは「リロードせずに更新できる快適な操作性を目指す」と答え、応用力の高さが評価されました。

【表彰式】

「マイプロフ帳」は、デジタル技術を活用してアナログ文化を進化させた点が非常に高く評価され、審査員特別賞・Matz賞・ピクシブ賞とトリプル受賞となりました。

椎葉さんは、「このような賞をいただけてとても嬉しいです。今後もさまざまな作品を制作し、多くの人の役に立つツールを作っていきたい」と述べ、さらなる挑戦への意欲を見せました。


審査員特別賞/永和賞
茨城県立IT未来高等学校 チーム「IT未来菊部門」 立原 和敏さん、米田 時空さん(茨城県)
作品名「菊灌水装置」

茨城県立IT未来高等学校 チーム「IT未来菊部門」_立原 和敏・米田 時空(茨城県) 作品名「菊潅水装置」  茨城県立IT未来高等学校 チーム「IT未来菊部門」_立原 和敏・米田 時空(茨城県) 作品名「菊潅水装置」  茨城県立IT未来高等学校 チーム「IT未来菊部門」_立原 和敏・米田 時空(茨城県) 作品名「菊潅水装置」    

【発表内容】

チームIT未来菊部門は、菊栽培の効率化を目指し、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた「菊灌水装置」を開発しました。このシステムは、灌水を自動化する「ラズベリーパイ(Raspberry Pi)」を基盤とした装置と、遠隔操作や監視が可能なWebアプリケーションから構成されています。

発表では、地元の伝統行事「笠間の菊まつり」参加のため、夏期や長期休暇中でも菊の品質を維持したいという課題解決が説明されました。センサーが土壌の「湿り具合」を測定して灌水の必要性を判断します。適切なタイミングで菊に水を供給する一方、カメラは撮影した画像をGoogle Driveに送信。さらに、Webアプリケーションでは灌水の手動操作や天気予報の確認が可能で、ユーザーはリアルタイムで状況を把握しながら必要な対応を取ることができます。

技術面では、Sinatraフレームワークやpigpioライブラリを用いて効率的なシステム構築が実現されました。このプロジェクトはIoTとWeb技術を融合させた実践的な取り組みとして高く評価されました。

【質疑応答】

審査委員からは技術的な詳細について質問がありました。江森審査委員は、役割分担の質問を通じ、チームの協力体制を称賛しました。また、セキュリティ対策の必要性についても議論が交わされ、今後の展望が期待されました。

【表彰式】

「菊灌水装置」は、社会課題の解決を目的とした実用性の高さが評価され、審査員特別賞と永和賞を受賞しました。田中審査委員は、「ハードウェアとソフトウェアの統合によるIoTの課題解決が見事」とコメントしました。

立原さんは、「これからも進化させていきたい」と今後の開発を語り、米田さんは、「この賞をいただけて感謝している」と受賞への感謝の気持ちを表しました。


審査員特別賞
柳 潤星さん(神奈川県)
作品名「ぷらうど発言」

柳潤星(神奈川県) 作品名「ぷらうど発言」 (神奈川県)  柳潤星(神奈川県) 作品名「ぷらうど発言」  柳潤星(神奈川県) 作品名「ぷらうど発言」 (神奈川県)  柳潤星(神奈川県) 作品名「ぷらうど発言」 (神奈川県)   

【発表内容】

柳潤星さんが制作した「ぷらうど発言」は、日常会話での不安を軽減し、コミュニケーション能力を向上させるWebアプリです。ユーザーが発言を録音し、第三者からの客観的なフィードバックを得られる仕組みで、発言の適切性や伝わり方を評価・改善することを目指しています。

録音データはタグやタイトルを付けて投稿可能で、評価者は「絵文字感情」やコメントを通じて意見を提供。検索機能やランダム閲覧機能も備え、匿名性を保ちながら利用できます。

アプリの設計にはHTML、CSS、JavaScript、Rubyを用い、Sinatraフレームワークで効率的に構築。録音データはデータベースに保存され、GoogleサインインやAjaxによる非同期通信が快適な操作性を実現しています。

さらに、直感的なUIと美しいデザインが特徴で、録音データやフィードバック結果は視覚的なグラフとして確認できます。

【質疑応答】

田中審査委員は「評価内容のタイミングや質の変化への影響」を指摘しましたが、柳さんは「ユーザーの不安解消が主目的であり、良い評価を得ることで満足感が得られる」と説明しました。

【表彰式】

「ぷらうど発言」は、社会的なニーズを反映し、コミュニケーション不安を解消する画期的なツールとして審査員特別賞を受賞しました。江森審査委員は「不安の解消を支援するアイデアと技術的完成度が高い」と称賛し、さらなる機能拡張への期待を示しました。

柳さんは、「このような賞をいただけてとても嬉しい」と感謝の気持ちを述べつつ、さらなる挑戦を目指していました。
 


【講評・講演】

まつもとゆきひろ審査委員 
▲まつもとゆきひろ審査委員長

【講評】

ゲーム部門では、どの作品も非常に完成度が高く、審査員一同、驚かされました。

山室さんの「Robot hunting」は、難易度の高さやゲーム性、そして完成度の全てが見事で、受賞に相応しい作品でした。

野原さんの「GHOST HOUSE」は、プログラミングの技術面に焦点を当てたプレゼンが評価されました。

@(アットマーク)の「マルバツ」は、家族全員で楽しめる作品として親しみやすく、コミュニケーションツールとしての可能性が感じられました。

秋山さんの「Zoo」は、バトルがない独自の雰囲気を持つゲームで、非常に興味深いものでした。

Webアプリ・IoT部門では、西原さんの「EmoTrack」は、若い世代がメンタルケアに関心を持つこと自体が素晴らしく、必然性のある機能設計が評価されました。

小泉さんの「VisPhys」は、ビジュアル的なインパクトと技術的工夫が際立っていました。今後の改良と発展が期待されます。

椎葉さんの「マイプロフ帳」は、自由なレイアウト設定や安全性を重視した設計が印象的でした。

チームIT未来菊部門の「菊灌水装置」は、地元の伝統行事を支える実用性の高いプロジェクトで、システムの完成度には、審査員全員が感心しました。

柳さんの「ぷらうど発言」は、社会的な課題に向き合ったアプローチが評価されました。SNS時代において重要なテーマを扱い、今後の可能性を広げる作品です。

【特別講演】テーマ「AIとプログラミングの未来」

「AIとプログラミングの未来」について、私が最近出会った興味深いエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

先日、高校生からこんな話を聞きました。プログラミング経験が全くなく、教えてくれる人もいない状況で、「どうしてもゲームが作りたい」という強い思いを抱いていました。彼はAIに助けを求め、ChatGPTを使いながら独学でプログラムを完成させたのです。

AIが彼に提供したのは、ゲーム制作の初歩的なコードや環境構築のアドバイス。それを元に試行錯誤を繰り返し、最終的には「ブロック崩し」ゲームを完成させました。このエピソードは、AIがプログラミング学習のハードルを大きく下げ、新しい学習スタイルを生み出していることを象徴しています。

AIは生産性を向上させる一方で、まだ課題もあります。たとえば、ChatGPTが不正確な情報を提示することや、現時点では人間の欲求や動機を持たない点です。プログラミングにおいて、具体的な目的や創造的な発想を持つのは人間であり、そのアイデアを形にするためには依然としてプログラマーの役割が重要です。

60年前のプログラミングと比べると、技術の進化により手間は劇的に軽減されています。しかし、アイデアを実現するための情熱やモチベーションは、これからも人間だけが持つ特権です。

今年のコンテストで私が感動したのは、皆さんの作品に込められた独創的な発想です。課題解決の手段として、また楽しみのために、プログラミングを活用している姿勢に胸を打たれました。この「創造性」こそがAIには代替できないものであり、プログラミングの真髄だと感じています。

コンテストで発表された作品を眠らせず、さらなる改良や公開を通じて、多くの人々に届けてください。そうすることで、皆さんの発想が世の中を良くする力になると信じています。

また、プログラミングは自分自身の成長を楽しむと同時に、社会を変える可能性を秘めています。今日ここにいる皆さんが、10年後、20年後に日本を代表するプログラマーや起業家になる日を楽しみにしています。


閉会式

吉田純夫副実行委員長
▲吉田純夫副実行委員長

中高生国際Rubyプログラミングコンテスト2024 in Mitakaの閉会式では、副実行委員長であり株式会社まちづくり三鷹代表取締役社長の吉田純夫氏が挨拶を行いました。今年のコンテストが137件という多くの応募を集め、例年以上に高いレベルの作品が揃っていた点を評価し、入賞者たちの努力を称賛しました。また、協賛者や審査員、実行委員への感謝の言葉を述べ、コンテスト運営に携わったすべての関係者をねぎらいました。入賞者たちが今後も挑戦を続け、大きく羽ばたいていくことへの期待を表明し、2024年度のコンテストが成功裏に幕を閉じました。